第10話 固有魔法・アンプ

手術は、脇腹部分に切り込み、魔力が使える様になる石を入れた。全身麻酔でよく分からない内に終了。魔法陣は、多少時間がかかる。腰に魔法陣を手書きで入れ、書き終わったら、魔法陣を焼き付けて終了する。さすがに焼き付ける工程の痛みは半端ではなかったが、足を切られた痛みに比べれば・・・。


体内にある石が馴染むまで、義足作りとなる。今の自分の足は両方ともすね辺りから下がない。義足を付けられる様に、アリーサが手当も含め、処置してくれた。今は余りいい材料がないらしく、木製で表面を金属で覆う様に加工。木製の義足内部や足の間につけるクッション材には、スライムを加工して使用するそうだ。魔力を流すと自分の思い通りに操作出来る様になると言う。


改めて、スライムも居るファンタジー世界なんだと実感する。


そう言えば聞いていない事があったと、幸樹こうきに話しかける。

「魔法使えるんだろ?」

幸樹こうきがにやっと笑いかける。

「やっと、その事を聞いたな。おせぇよ。」

幸樹こうきは奥の部屋に入っていき、準備をして戻ってきた。腰の袋には、魔石を入れてきたのだろう。

で・・・何で右手にギターケースを持っている?

なんで取り出したギターがエレキでフライングVなんだ?

電気もないのに・・・

幸樹こうきがギターを弾き始めると何故か、アンプから出た様な音がする。なぜ、メタルを弾き、ヘッドバンキングをしているかは分からないが、これは・・・魔法なのか?


アリーサがばっと飛び出してきて、幸樹こうきの後頭部にラリアットをかます。


幸樹こうき!うるさい!」


アリーサは幸樹こうきに説教をしている。

「で、幸樹こうき、それがお前の魔法か?」

「最高だろ!」

「・・・他には使えないのか?何か、こう・・・攻撃的な?」

「使えるけどな・・・本当にこの魔法のすごさ・・・伝わらない?」

アリーサが幸樹こうきの肩を叩き、

「私は、風と水の属性魔法を使えるんだけど、幸樹こうきに教えて、風の属性魔法を使える様になったの。・・・正直言って、今使った魔法は、無駄にすごい魔法でね。エルフに伝わる遠くへ声を届ける魔法を改良して、皆にギターの音を届けているみたい。」

「それだけじゃねえぞ!その魔法の間には、エレキっぽい音にする、エフェクトを入れるなどの魔法を組み合わせている。・・・これが俺だけの魔法(アンプ)だ!」

公彦きみひこは、呆然とした表情で幸樹こうきを見る。

「この馬鹿、こんな無駄遣いしてるけどね、でも・・・正直すごいよ、今まで存在しなかった魔法を作りあげるなんて。・・・馬鹿と天才は紙一重ってやつかな。」


こいつに魔法の事を聞くんじゃなかった。


一週間後、義足も完成し、ついに動ける事になった。

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