第100話「まだまだ」
さすがに学校から直接ダンジョンには行けないので、一度俺は帰宅した。
すぐに出迎えたクーとエリにこれからの予定を告げる。
「ダンジョン? 学校とやらの知り合いと?」
山野たちはクラスメートであっても友だちじゃないというのが俺の認識だし、たぶん向こうも似たような感覚だろう。
ダンジョンに誘ってきたのは「何も知らない俺に教える」のが目的かな?
俺が知ってる範囲なんてほとんどないのだから、彼らの考えが間違ってるとは思わない。
知らないことを教えてもらえるならありがたいので、素直に誘いに応じたのだ。
「なるほど。ではわたしもついて行こう」
とクーが言い出す。
「クーだとちょっと過剰かもなぁ」
俺は懸念する。
おそらくだけど天王寺豪快よりも山野たちは弱いはずだ。
彼らが苦労していたダンジョンもそんなに難しくなかったことを思えば、クーでは出番がないだろう。
「ではわたしが行きましょう。わたしなら魔法で姿を隠せますし、いろんなことに対応可能ですよ」
とエリが手を挙げる。
「そうだな。エリのほうがいいかな」
と賛成した。
どうせ誰もついてこないという選択肢は、彼女たちが認めないだろうからだ。
クーは不満そうにこっちをじーっと見る。
「まあエリもやることはないと思うけど」
俺たちがやってることを魔法で身を隠してながめているだけになりそうだ。
「それでもいいです。やまとのことは年中無休で見守りたいですから」
エリはにこりと微笑むけどこっちは笑えない。
「俺はもう赤ん坊じゃないんだよなぁ」
小さいころだったらたしかに彼女たちについていてもらう必要があっただろうけど。
「わたしから見ればまだまだですよ」
とエリは微笑む。
「子どもあつかいされてるみたいであまりうれしくないなあ」
「そうだ。やまとはそろそろ一人前だ」
苦笑してたらクーが意外なことを言い出す。
「味方してくれるなんてどういう風の吹き回しだ?」
どちらかと言うと彼女はエリ以上に過保護なのに。
「すこしずつだけど、やまとは成長している。それを認めただけ」
とクーが言うけど、たぶん何か裏があるな、この表情。
「クー様が? 何かあったのですか?」
エリも驚愕で目を見開いて問いかけている。
もっとも、クーは彼女のほうは完全に無視するつもりのようだ。
「まあいいや。あんまり待たせても悪いからそろそろ出たい。エリ、よろしく」
「ええ」
エリが魔法を使えば水と携帯食くらいすぐに用意できる。
服を着替えてだらだらしゃべっても時間的な心配はいらないのだ。
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