第94話「デマでも誇張でもなかった」
「ここが日本か。うわさ通りジメジメしてやがる」
「たしかにニューヨーク並みに繫栄してそうだ」
「飯が美味い店が多いらしいぜ。観光もしようぜ?」
【フロンティア】のメンバーはそれぞれ自由に発言する。
彼らは今回の日本行きをバカンスだと割り切っているからこそだ。
「そうだな。だが、先にやるべきことはある」
とリーダーは方針をあらためて言葉に出す。
忙しい彼らが極東の島国にわざわざ足を運んだ理由。
「【アマテル】との待ち合わせ場所はどこなんだ?」
「ソークから経路を共有してもらってる。心配するな」
仲間からの質問にリーダーは笑顔で答える。
「さすがぬかりないな」
「雑なようでいてマメだな」
仲間たちの軽口を聞き流し、リーダーは彼らを先導していく。
全員が身長百八十を超えていてサングラスをかけている大男たちの集団は目立ったが、誰も意に介さない。
「電車が一度も遅れないなんて、日本はうわさ通りすごい国だな」
「公共の交通機関がこんなにまともに機能しているとは……」
「都市伝説じゃなかったのか」
アメリカ人たちは目的地までに着くまでの出来事に感動していた。
「日本人はマナーがいいってのも本当らしいな」
「地元じゃ考えられねえよ」
と彼らの口から自然と褒め言葉が続出する。
「暮らすならこっちでもよくないか?」
「銃は持てないらしいが、俺らには関係ないからな」
と彼らは笑う。
探索者として実力と功績を積み上げてきた彼らは、一般人から見て同じ生き物とは思えない強さを誇る。
探索者の脅威になり得るのは探索者のみ、という考え方は間違いではない。
日本に感心する陽気な彼らの気分が一変したのは、目的地に近づいてからだ。
「……リーダー、わかるか?」
冷や汗をかきながらひとりがリーダーに問いかける。
「ああ。とんでもなくやばい気配がふたつ。こっちを警戒してるようだ」
答えたリーダーの表情はこわばっていて、血の気も失せていた。
「ソークが言ってたのはデマでも誇張でもなかったな。戦力50のダンジョンボスが、まるでハムスターだったと思えてるぜ」
仲間の発言にリーダーをふくめ全員がうなずく。
「まさかダンジョンボスよりやばいやつと地上で会うとなんてな。だが、それでこそはるばる来た甲斐があるってもんだ」
とリーダーは言うが、強がりだと仲間たちは気づいた。
だが、気持ちは理解できるため、からかわずに同調する。
「そうだな。ソークが言ってることが事実なら、こっちがしくじらないかぎり脅威にはならないんだ。尻込みする理由はねえ」
と彼らは言い合って「ナニカ」がいる場所を目指す。
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