第91話「まずあり得ない」
烏山さん、楠田さん、甲斐谷さんの誘いでカフェに来た。
「みんなは何にする?」
と烏山さんがメニューを開きながら問いかける。
「わたしはパフェと紅茶」
「わたしはケーキとコーヒー」
「じゃああたしはココアとパフェかな」
楠田さん、甲斐谷さん、烏山さんの順番に頼むものが決まる。
こうして聞くと意外とバラバラだなと思う。
「不死川くんはどうする~?」
右隣の席に座った甲斐谷さんにふんわりとした声で問いかけられる。
「コーヒーとクッキーにしようかな」
この店のパフェはかなりのボリュームがあって、ひとりで食べきれる自信がないとうのが正直なところだ。
「不死川くんって意外と小食?」
「それとも甘いものが得意じゃないとか?」
女子たちから興味津津といった質問が飛んでくる。
「甘いものは好きだけど、たくさんは食べられない感じ?」
「なるほど~」
甲斐谷さんがその発想はなかったとばかりにうなずいていた。
女子としゃべるのにはさすがにちょっとずつ慣れてきたと思うけど、距離感についてはイマイチつかめてない。
だって向こうに誘ってもらってるだけで、自分から動いて仲良くなれたわけじゃないからね。
今日は進路の話は出ず、単純なおしゃべりだった。
面白かったアニメや動画が中心なので聞き役に回る。
毎回誘ってもらって聞き役なのは悪いから、話題に入れるようにすこしはチェックしたほうがいいかな?
なんて悩みながら三人と別れた。
「いつものメスの匂いがするな」
帰宅して早々にクーがいつものことを言う。
「そりゃたぶん友だちなんだろうからね」
何度も誘われてるってことは、さすがに友だちと向こうが思ってくれてると考えていいのだろう。
愛想尽かされそうでちょっとこわいけど、だからと言って断る勇気もない。
「たぶんって何だ?」
クーが怪訝な顔をしたので事情を話す。
誘われてばかりなのに女子とうまくつき合えるスキルがある、なんてうぬぼれることはできない、とも打ち明ける。
「なるほど。誰かがやまとを狙ってそうだな。まさか全員か?」
「それはいくら何でもないのでは……」
クーの予感はかなりよく当たるはずだけど、人外なので人間同士の感情には明るくないようだ。
「やまと? 女が好意を持ってない男を幾度も誘うなんて、まずあり得ないと思っているほうがいいと思うぞ?」
クーに真顔で言われてしまう。
「そ、そうなのかな?」
そんなバカなと思うけど、否定できる根拠は何もなかった。
クーも性別上は女だし、俺より女性の気持ちはわかるかもしれないし。
……人外だけど。
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