第79話「わたしに勝てるはずがないだろう」

 ルシオラたちとのコラボを終えて自宅に戻って来た。


「あんな女が好みなのか?」


 とクーは言うので首を横に振る。


「そういう意図はないよ」


 あれだけ可愛いなら彼氏いてもふしぎじゃない。

 仕事の関係なのに、色恋沙汰に持ち込まれたくないだろう。


「あなたがパーティーを組みたいなら、わたしとクー様がいますよね」


 玄関まで出迎えてくれたエリが言う。 


「ふたりとも強すぎる可能性が出てきたんだよな」


 俺は懸念を口にする。

 今日のダンジョンで出たモンスターはどれも弱かった。


「ウチの一階の連中よりも弱そうだったよ。ファリがいれば充分じゃないかな」


 あれだとクーもエリもジャターユもいらないだろう。


「ファリだけで? ずいぶんと軟弱なダンジョンがあるものだな」

 

 とジャターユが会話に入ってくる。

 

「ちょっと待ってくれ。やっぱりファリでも過剰戦力かも」


 どうもウチのダンジョンってよそと比べてレベルが高い気がしてならない。

 ルシオラだって日本では上位に入る実力者だったはずなんだ。


 すくなくとも可愛いだけで人気ある人じゃない。

 

「たしかにニンゲンどもは弱いくせに危機感がなく、自分たちが万物の長だと勘違いしてるようだ」


 とクーがふり返る。

 

「ちょっと目を離すとすぐに増長する子には困ったものです」


 エリがなぜか保護者目線っぽい、ふしぎなことを言う。

 相当に年上なせい?


「腹が減ったけど、今日は外食かな」


 エリに料理は任せてはいけないのだ。


「え、わたしが作ったよ」


 とひょっこりとアルカが顔を出す。


「マジか。ありがとう」


 アルカなら色が赤い以外は問題なく、安心して食べられる。

 礼を言うとエリが複雑そうな顔になった。


「もっと修行しなければ。やまとに満足してもらわなければ」


 ぶつぶつ言ってる。


「エリの場合はほかのことで助けられてるからいいのに」


 と言うと彼女は首を横に振った。


「もっとできることを増やしたいのです」


 俺のためにと言うのは言われるまでもない。


 ふだんは俺の言うことをよく聞いてくれるのに、ほどほどでいいと言っても聞いてくれないんだよな。


 食事はみんなで平らげる。


 クーもエリもアルカも飲み食いしなくても平気なんだけど、家でもぼっち飯はちょっとつらいからね。


「味はともかく見た目の趣味が悪いんじゃないか?」


 とクーが感想を言う。


「何で? きれいでしょ?」


 アルカは本気でふしぎがって、ふたりが俺を見る。


「クーの言ってることのほうが分かる」


「ええー!?」


 アルカは意外だとのけぞって叫ぶ。


「勝った」


 クーはうれしそうにどや顔をしてる。


「だいたいわたしが一番やまとの好みを把握していて、合わせられるから食事当番をやってるんだぞ。そのわたしに勝てるはずがないだろう」


 彼女が得意げにしゃべると、


「ぐぬぬぬ」


 アルカは悔しそうにうなった。

 エリも似たような表情である。

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