第75話「コラボのお誘い」
甲斐谷さんたちと遊んだ夜に、ルシオラから遠慮がちに配信コラボのお願いが来ていた。
「何でいまなんだろう?」
俺はメッセージをクーとエリに見せながら首をひねる。
知り合ってからそれなりに時間は経過していた。
「誘っても大丈夫なのか、さんざん迷ったんだろう」
「とうとう勇気が遠慮に勝ったというところでしょう」
彼女たちにはすぐにわかったらしいけど、俺にはピンと来ない。
「知り合いだしオッケー出しておこう」
「……いいの?」
「許可を出すのですね」
俺の返事を見てクーとエリがちょっと驚いている。
「まあ、俺たちのことを多少なりとも知ってる人だからね。初対面とはわけが違うよ」
と笑う。
「ルシオラとやらがもしも恩知らずのたぐいだった場合は?」
考えないようにしていた可能性をクーが言語化して、質問としてぶつけてくる。
「その場合はサヨナラだね」
べつに恩を着せたいわけじゃないけど、いやなものはいやだ。
「ならそのときはわたしが懲らしめてあげましょう」
とエリがニコッと微笑むが、これは敵を威嚇するときのもので、俺の肩の上で黙ってたたずむジャターユがビクッと震える。
「やりすぎてはいけないよ」
ちゃんと釘を刺しておかないと、エリはやりすぎそうだからね。
「もちろんです。ニンゲンたちが疑わない範囲にとどめます」
「こいつの陰険さについては信用していいよ、やまと」
とクーが余計なことを言う。
「あなた様と違って応用がきくと言っていただきたいですね」
エリが言い返してふたりの間にバチッと火花が散る。
「何でそんな展開になるの?」
言い争いがはじまるような流れじゃなかったよねと呆れた。
「ごめんなさい」
クーとエリはハッと我に返って俺に謝る。
「許す」
大したトラブルじゃなかったからね。
ルシオラから長文の返事が届いたので、予定を詰めていこう。
「いっしょに来てもらうのはクーでいいかな」
「よし!」
クーは握り拳を作って喜ぶが、隣でエリがガーンとショックを受けている。
「な、なぜですか。対応力で言えばわたしのほうが適任だと思いますけど」
エリの言い分もわからなくもない。
「やまとの決定に異を唱えるな。黙って従え」
とクーは言うが、勝ち誇るようにニヤニヤしているせいで、厳しい注意という感じはしなかった。
「ううう」
エリは悔しそうにうなる。
なかなか珍しい光景だ。
普段はあんまり俺に見せないようにしてるのは何となく気づいている。
「何かあったときの対応はエリに任せようかな」
クーのほうが強いんだけど、小回りきかないのが数少ない欠点だから。
「承知いたしました」
エリはたちまち上機嫌になった。
つき合うのが楽で助かるね。
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