第73話「ダンジョン配信って簡単にやれるのかな?」
今日も昼飯は甲斐谷さんたち三人ととっている。
最初は視線を集めていたけど、いまは何か「またあいつらか」みたいな視線を送られるだけになった。
まあ俺もちょっとずつ慣れてきた。
「ねえねえ、今日の放課後はヒマ?」
と甲斐谷さんがいきなりの質問をしてくる。
「うん、ヒマだよ」
俺は即答した。
宿題をまじめにやっていない帰宅部だから、ダンジョン配信くらいしかやることがないんだよね。
あれもクー、エリ、ジャターユに連絡しておけば自由なタイミングでできるから、いくらでも融通はきく。
「じゃあまた遊びに行こうよ」
「いいよ」
と甲斐谷さんの誘いに即答した。
彼女の誘いに応じるのは何回目だろう?
いつも女子しかいない集まりだからすこし困るんだけど、このメンバーだけならさすがに緊張しなくなってきたからいいかな。
「不死川ってさ、放課後ふだんは何してんの?」
と烏山さんに聞かれてドキッとする。
本当のことはもちろん言えないし、そもそも信じてもらえない。
「家でゴロゴロしたり、動画とか見てるよ」
「そうなんだ」
俺の返事を聞いた烏山さんの顔には「そうだろうな」と書いてある。
陰キャが放課後家でやってることってあんまり変わらない気がするんだよね。
部活に入ってたり、何か趣味があるやつならともかく。
「じゃあさ、今日はスイーツ食べに行かない?」
「うん」
甲斐谷さんの提案は脈絡ない気がしたけど、珍しいことじゃない。
あとでクーには連絡を入れておこう。
昼休みが終わりそうだから教室に戻ると、
「決めた! 俺もダンジョン配信をやる!」
山野たちがなぜか盛り上がっていた。
「またバカ言ってる」
烏山さんたちは興味なさそうにスルー。
俺はちょっと気になるんだよね。
自分の家以外に、この辺に入れるダンジョンってどれくらいあるのか、何も知らないし。
ダンジョン管理局に質問したかったけど、クーとエリに「相手に情報を与えないほうがいい」と反対されてしまったのだ。
情報ってみんなでシェアするほうがいいイメージだったからびっくり。
「ダンジョン配信ってそんな簡単にやれるものなのかな?」
俺は自分のことは棚に上げて甲斐谷さんに聞いてみる。
「え、なんであたしに聞くの?」
甲斐谷さんはなぜかちょっとびっくりしていた。
「なんでって、隣にいるから?」
俺の真横が甲斐谷さん、その隣に烏山さん、楠田さんという位置関係である。
誰に聞いてもいい質問なのに、甲斐谷さんを飛ばすほうが変じゃないか。
「あー、そういう」
甲斐谷さんは何かを察したという表情で苦笑する。
「ここら付近だとダンジョンふたつくらいあるらしいよ? 聞いた話だけどね」
「そうなんだ、ありがとう」
とお礼を言う。
ルシオラと会ったときのダンジョンがどこにあるんだろうな。
あそこのダンジョン、強いモンスターいなかったから、山野たちでも何とかなるかもしれない。
ダンジョンに興味ないはずの俺がすすめるのは不自然だろうから、黙ってるけど。
「不死川くんも実は興味あったり?」
と甲斐谷さんが目をのぞきこむように聞いてくる。
「ないわけじゃないけど、俺は無理だろうね」
クーとエリに黙ってやれるはずがないと苦笑いした。
*************************************************
新作異世界ものはじめました
よければどうぞ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます