第72話「物心ついたときから」
見回りしていてもとくに異変というものはなさそうだ。
上が自宅なのでここに何かあっても困るけどね。
「ふむ、事情は何となく分かった」
スカジにはジャターユが最近俺がはじめたことを説明してくれた。
人外なのに俺より上手かったりするから……。
「わらわでよければ力になりたいと思うが、必要かな」
「必要ない」
クーが勝手に答えたので、俺の手でその口をふさぐ。
「むー」
不満そうな声をすこしあげたものの、俺が本気だと察したらすぐにおとなしくなる。
「必要になったら頼みに来るよ。そのときはよろしく」
「心得た」
スカジは俺とクーを微笑ましそうに見ていた。
保護者目線かな?
「紅月の涙程度のアイテムで外は喜んでいるくらいなので、あなたの出番はしばらくないと思いますよ?」
とエリがスカジに話す。
「ふむ。地上には興味なかったのだが、ずいぶんと貧弱なのだな。よく滅んでないものだ」
スカジは目を見開いた。
どうやら相当驚いたらしい。
「いや、外の世界にはモンスターって歩いてないから」
彼女たちみたいな存在がうようよいるなら、たしかに人類が滅んでしまう可能性だってあるのかもしれない。
ファリくらいなら軍隊が撃退できるんだろうけど。
「ふむ? 興味がすこし出てきたな」
とスカジは意外なことを言い出す。
俺の知り合いの中で一番興味を持たなさそうな性格だと思ってたのに。
「スカジなら出てもいいんじゃないかな?」
と言った瞬間、クーが俺の手を外す。
「やまと!? 本当にいいの!?」
口をふさいでた手を握りしめながら彼女は確認してくる。
「スカジは温和で理性的で、喧嘩を売られても無視するおとなの性格だ。一番安心と言えるよね」
「うっ……」
「た、たしかに」
クーもエリも反論はないらしい。
「やまとに褒められるとやはりうれしいな」
スカジは口元をほころばせる。
俺の周りにはいない大人の魅力って感じだ。
「む、わたしの外見年齢、もっと上げるべきだったか?」
「やまとと同じ年ごろに見えるほうがいいと思っていましたが、実は年上が好みだったのでしょうか?」
クーとエリが何かふたりでひそひそと相談をはじめる。
何か、勘違いされてるんじゃないだろうか?
よく聞き取れなかったので勘でしかないけど。
「三人の関係は相変わらずか」
スカジはやはり保護者のような目で俺たちを見ている。
「まあ変化するような出来事って、まずないでしょ」
物心ついたときからの家族みたいな関係なんだ。
ちょっとやそっとでビクともしないはずだよ。
「え?」
「思ったよりもずっと手ごわいですね」
なぜかクーとエリは動揺したみたい。
あれ、どうしたんだろう?
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