第68話「リズ」
エリの魔術で25階まで一気に移動する。
時間効率で言えばおそらく最強だろう。
「やまと!」
直後、身長が同じくらいの女性にいきなり抱き着かれる。
「リズ」
クーとエリがいっしょなのに止められなかったのだから当然理由があった。
赤いタンクトップにハーフパンツという刺激的なファッションで、頭には山羊みたいな角が二本はえている。
「久しぶりだなぁ! もっと会いに来てくれよ!」
明るく朗らかな笑顔で言われた。
「ああ、ごめんよ」
彼女の性格からして会えたからもう気にしないだろう。
「で、お前らは相変わらずべったりなのか」
笑みを種類をさっきとは変えて、リズはクーとエリを見る。
「離れる理由がない」
「なにを当たり前のことを言うのですか」
クーとエリの返事は非友好的にもほどがあった。
「はっ、寂しがりやどもめ。すこしはおれを見習ったらどうだ?」
とリズは胸を張る。
相変わらずかなりデカい。(人外だけど)
「アルカが泣きついたくらいだから、かなり荒れてたはずですよね」
エリは煽りに動揺しないどころか、煽り返す。
「くっ……あのおしゃべりめ」
リズは悔しそうに舌打ちをする。
「俺はリズに会いたかったんだけど」
「ほんとか!? 聞いたか、お前ら!?」
彼女は俺に抱き着いたまま、クーとエリを煽った。
「やまとが優しいだけ」
クーは淡々と、
「わたしたちは毎日会ってますからね」
エリは笑顔で切って捨てる。
「ぐうっ……」
レスバトルだとやっぱりリズはそんな強くないよね。
「レスバじゃいつも負けるんだからよせばいいのに」
「やまと!? それ言っちゃダメだ!」
リズはショックを受けた顔で抗議してくる。
どうやらタブーに触れてしまった。
「ふ、やまとに全敗と思われてるなんてさすが敗北者だな」
「敗北女ですね」
ここぞとばかりにクーとエリが追い打ちをかける。
「リズ、そろそろ離れてくれない?」
彼女たちがふだんよりも容赦ない原因は、俺に抱き着いたままだからだと思う。
「えー、やだ。せっかく会えたんだぞ」
リズはぷーっと子どもみたいに頬をふくらませて拒否する。
「やまとが離れろって言っただろう?」
「離れないなら力でわからせましょうか?」
クーとエリの顔が怖くなった。
リズがギューッと力を込めたと思った瞬間、彼女の体は天井に叩きつけられる。
「いい加減しろ」
口ぶりからしてクーの仕業だと思うけど、俺には何が起こったのか理解できない。
「やまとにまったく影響を与えない体術は、さすがクー様です」
とエリが俺に説明しながらクーのことを褒める。
いまのって体術だったんだ…。
「くっ、クーめ、強すぎるだろ」
リズは天井から床にきれいに着地しながら睨むが迫力はない。
「やまとの知り合いじゃなかったら砕いてるところだぞ?」
クーはふんと鼻を鳴らす。
「スプラッタは勘弁してくれ」
血とか骨とかが目の前で飛散するなんてごめんだ。
「ならチリにするほうで」
クーはすぐに訂正する。
「いや、おれを始末しようとするなって話だろう?」
リズが呆れて指摘したので、そのとおりだとうなずく。
「こんなのでも一応強い部類ですし、生かしておきましょう」
とエリが言う。
リズって強い部類だったのか。
俺にはよくわかんないや。
「おい、クーはともかくエリより下だと思ったことはないぞ」
リズはムッとして抗議する。
「あら、じゃあ格付けしておいたほうがいいでしょうね」
エリがにこやかに言うが、これはおそろしい時の表情だ。
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