第19話「女子たちとおでかけ」

 学校のほうでは特に変化はない。

 山野たちがうざいなと思ったら、烏山さんたちに呼ばれて会話する。


「不死川くん、クッキー食べる?」


 と甲斐谷さんがまたお菓子をくれた。

 いいのかなぁと思いつつありがたく受け取る。


「ちっ」


 男子たちの視線がすこし痛い。

 甲斐谷さんは男子人気がとてもある。


 甘くて可愛いルックスと、はちきれそうなボリュームの持ち主だからだろう。

 

 そんな人気の女子が陰キャの俺に優しいなんて、納得できないと思われていてもふしぎじゃなかった。


 当事者の俺が疑問に思ってるくらいだしなぁ。


「それで今度店に行ってみない?」


 烏山さんと楠田さんはファッションの話をしているらしい。

 女子ってオシャレ好きだなーっと聞いている。


 まあこの三人ならブランドものを着ても決まるんだろう。


「ねー、不死川くんも来ない?」


 と甲斐谷さんが話しかけてきてぎょっとする。


「いや、俺は遠慮するよ」


 どう考えても釣り合わない。

 教室で話しはするけど、いっしょに遊んだこともない。


 烏山さんと楠田さんに反対されて終わりだろう。


「別にいいじゃん? おいでよ」


 ところが烏山さんが賛成する。


「えっ……」


「異議なし」


 楠田さんも言ったので俺の参加が決まりそうだ。


「マジで?」


 男子の声が聞こえるが、俺の心の声とシンクロしている。

 どうしてこうなった?


「学校から直接行くから」


 よろしくーと烏山さんに言われてしまう。

 断れるような流れじゃなかった。


 クーには連絡を入れておこう。



「不死川ー、いっくよー」


 ゆるい感じで烏山さんに誘われ、俺はバタバタと合流する。


「あわてなくていいよー」


 甲斐谷さんがコロコロ笑う。

 男子たちから刺すような視線を感じるのは、気のせいじゃないんだろうな。


「なんであんなやつが」


 怨嗟のこもった声を聞き流す。

 甲斐谷さんはニコニコ、ほかのふたりはカッコイイくらい堂々としている。


 女子たちってどこに行くんだろう?

 と思いながら俺は三人のあとをついていく。


 三人とも男の視線を集めている。

 そしてあとを歩く俺は何なんだろう? という目で見られるパターンだ。


「不死川って甘いものきらいじゃないよね?」


 三人の短めのスカートから伸びる足に、スケベな視線を送ってるやつはけっこう多い。


 後ろから見てると露骨すぎると感じるときがある。


「不死川さ、甘いものきらいじゃないよね?」


 烏山さんはいきなり足を止めてふり返った。

 ちょくちょく甲斐谷さんから甘いものもらってるから、確認しただけだろう。


「平気だよ」

 

「じゃあここ入ろ」


 烏山さんが指さしたのはオシャレでファンシーなスイーツショップだった。

 当然と言うべきか、中の客はほとんど全員女子である。


 たまにカップルらしきペアもいるけど、男のほうは居心地悪そうだ。

 気持ちはとてもよくわかる。


 俺なんてカップルですらないけど。

 

「不死川くん、ここー」

 

 甲斐谷さんに言われた通り、彼女の隣に腰を下ろす。

 座席にあんまり余裕がないので、彼女と体が触れ合ってしまいそうだ。


「あはは~そんな気を遣わなくても平気だよー」


 俺が間隔をとってるとバレバレだったのか、甲斐谷さんが言う。


「不死川っておもしろいよねー」


 烏山さんたちにも笑われた。

 バカにされてる感じはしないけど、ちょっと恥ずかしい。


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