29話 亡者戦争の幕開け
「おう? お嬢ちゃんも
「Lv8か。安全マージンしっかり取ってんな」
「レベルの低い奴らもレアモンスター見たさに見学にきてるが
「今回はだいたい300人近くが集まったらしいぞ」
「基本的には8人PTで行動しながら、【白き千剣の
俺が潜んだのはメルやウタさんがいない中央の陣だ。
どの
つまり【亡者】と戦うにしては過剰戦力すぎる。
だがその分、僕にとっては稼ぎ時となるだろう。
今までのデータから
さて、そんな高レベル
騎士風の装備に身を固めた美女が率いる8人の集団だ。彼女の名はコンゴウLv19と表示されていて、Lvが頭一つ抜けている。
あの人たちが、メルたちが言っていた
「いいか! みな、なるべく一列になりながらゆっくりと前進しよう!」
どうやらコンゴウLv19が、今回の
「どこかのPTが集中的に襲われたり崩れだしたら、そこに
金髪美女が声を上げれば、その戦略方針は横へ横へと広がりを見せる。彼女は300人弱の
亡者を一匹も逃すつもりはないらしい。
しかし一列か……一点集中でぶつければ食い破りやすいけど、その後は散開されて包囲されそうだ。
「では! 総員、ゆっくりと進軍!」
コンゴウLv19が、月下に剣を振り上げる。
その合図を以って
「今宵は【
「「「おおおおお!」」」
金か。
金さえあれば
なら、そうだ。このゲームで
◇
隠しステータス。
それはおそらくバフなどが発動したときにかかる代物だと思う。例えば【破壊力】は、武器や防具、そしてフィールドのオブジェクトへの破壊力を上昇させる魔法によって、1~10段階のバフが付くのだ。
そして僕の【神々を
それから白き草々の影を目にも止まらぬスピードで駆けた。
「
月明かりを頼りに目を凝らせば、白き草原にはぽつりぽつりと彷徨う亡者に、過剰戦力で
「
僕はさらに
呼び寄せ、呼び寄せ、呼び続ける。
もちろん
僕はそんな亡者たちに大量の装備を渡す。それは、先日から定期的に続けている
【弓矢】の装備に必要なのは、ステータス力2であるため亡者にも装備できる。
本当はもっと上等な装備もチラホラ持っているけれど、亡者にはこれが精一杯だ。
僕は亡者たち80体を横一列に展開させ、とある命令を出してその場で待機させる。
続いて
10体前後の亡者に【銅の槍】を素早く渡し、再び地中へと潜らせる。それを合計7カ所で行い、弓隊80体と槍隊70体の亡者を潜伏させるに成功する。
それから
「今夜は
「やっぱ【亡者】なんてザコだな」
「つまんねえ討伐戦だよ」
ふらふらとうろつく亡者を倒してゆくだけの作業は彼らから緊張感を奪いつつあった。
いい流れだ。
僕は弓隊が伏せてある地点からやや前方に位置する場に移動して、一気に亡者たちを呼び寄せる。その数は20、50、80、100体以上に膨れ上がり、筋力が3と高い亡者にのみ【銅の剣】と【銅の盾】を装備させる。
この剣と盾を持った戦士隊50と素手隊50の混成部隊は、地中から上半身だけを出す潜伏状態ではない。堂々と
「おい! あそこを見ろ!」
やはり、というべきか……
僕は相手が準備をする間に、せっせこ新たな亡者を呼び出し続け、それらすべてを地中へと潜伏させまくる。ついでに
亡者が装備できる武器はすでに底尽きていたので、素手隊となっているがその数は150を超える。
Lv10以下のモンスターなら、
さて、こちらの亡者軍は総勢400体。
対する
個々の能力差が大きいため、どれほどまともに戦えるかわからないけれど、やれるだけの事はやってみよう。
「突撃いい!」
どうやら
無論、僕も羞恥心を抑えながら突撃を命じる。
「女神に縛られし残骸どもよ、かつての貴様らの同胞を蹂躙せよ」
【亡者】たちの侵攻速度は
さて、
「——安息の土に還るなど許さぬ。より多くの死を引きずり込め」
やっぱりソレらしい台詞になってしまうのはちょっと恥ずかしい。
「おわ!?」
「地面から手が!?」
「ぎゃっ」
「転ぶぞ! 気をつけろ!」
「踏むな、おい! 俺を踏むな!? ダメージが入っちまう!?」
地中に潜らせておいた素手隊には、
ものの見事に前列から
「地中より亡者の出現! 焦らず各個撃破に移れ!」
コンゴウLv19が慌てた様子もなく命令するが、僕もこの一撃だけは終わらない。
「【月樹神アルテミス】の呪いに犯された者どもよ、死の雨を降らせるのだ」
150体の素手隊が足止めしている隙に戦士隊をぶつけ、さらに弓隊が一斉射撃を行う。
正直に言えば亡者たちの射撃精度には期待していなかったけど、
「おわ!? こいつら、剣をもってるぞ!?」
「盾もだ!」
「ちきしょう、邪魔だぞ! 足を放せよ!」
「矢だ! 矢が飛んできてる!」
「ど、どこからだ!? くそっ」
混乱は十分に引き出せていた。
矢は月が浮かび上がる夜空へ弧を描きながら宙空を走る。亡者たちの放った矢の雨が降り注ぐ。
「盾もちは上にかまえろ! 盾を持ってない者は、なるべく盾もちの影に隠れるんだ!」
さて、奇しくも彼らが密集し始めた場所は、槍隊を潜伏させていた近辺だ。
「ぐほっ!?」
「地面から槍が!?」
「ちがう、亡者だ! 槍もちのもじゃっ!?」
「くそおおおお、俺がこんなところでええええぐぎゃっ」
「落ち着けナリヤ!?」
上に盾を構えた
よし、メルたちにつっかかってたナリヤさんもキルしたっぽいな。これでまたLv上げをやり直すはめになったから、ノンさんたちにとっては五日後に控えた闘技場戦が有利になるかも。
「魔法スキルを持つ者は積極的に亡者の密集地帯に放て!」
「もうやってる!」
「くそ! 数が多いな」
「だけど所詮は亡者だ! 慌てるな!」
やはり戦力差は明らかで、それなりの数の
「絵描き魔法————【星空の
「めるめるが花火を描いてくれたねー範囲魔法? じゃあ私も集団催眠~! みんなで永眠! ねんねんころりやーおころりやー♪」
「ノンノン、スグに起コスです。キルしてキルして稼ぐます!」
「うおおおおおお! めるめるに続けえええ!」
「キラリンがチャンスを作ってくれたぞおおおお! 男を見せろおおおお!」
「うおっ、あのちびっこマジ強い。てか、あの剣ってルーンちゃんが鍛えたのと似てる……?」
しかも厄介なのがメルたちだ。
ウタさんとメルのリスナーも強いし、なんならノンさんもバッサバッサと【亡者】を切り伏せていく。
そして彼女たちの反対側からも、二刀流の女性
僕は敵
しかしそれも100体を超える頃になると、パタっと止まってしまった。
「この辺りで呼び寄せられるのは、この数が限界か……合計500体前後とな」
そして限界が来たのは戦力の補充だけではなかった。
やはり高レベル
「こうなると……
あくまで戦況を確認できるのは僕の視界内のみで、遠くの方ではどんな状態になっているのかまるで把握できない。
弓隊の撃滅も、いち早く敵の動きを察知していれば避けられたかもしれない。
「……この規模が相手になると、もはや【亡者】だけでは戦力的に足りないな。もっと強力な魔物を投入しなければ、
僕は亡者たちが殲滅されるのを静かに眺めつつ、今回の戦いをつぶさに分析する。それから
僕はその結果を見届け、ひっそりとその場を後にする。
キルした
つまり、たった数十分で3万五千円が手に入ったのだ。
時給1万円どころの話ではなかった。
「可愛いは、豪勢よな」
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