23話 月光呪の噂
◆掲示板◆
【転生オンライン】レア武器について【パンドラ】
:レア武器が全然でないいいいい武器ガチャしぶすぎいいい
:そうか? 1回500円で★2も出やすいから文句ないぞ
:武器ガチャといえば、最近解放された黄金領域のガチャはどうなん?
:【金歌めぐる花街】か
:あそこは吟遊詩人の街なだけあって、性能のいい弓や楽器が手に入りやすいな
:【
:吟遊詩人の【
:防具もやばいぞ。特に音色シリーズだな
:【風の音色】は素早さ+1だもんなあああ
:【鉄の音色】だって布系の旅装なのに防御+1だぞ!?
:装備できる身分が【吟遊詩人】や【語り手】系に限られてるのが問題だよな
:ここは武器について語るスレですよー
:おっと悪い。脇道に逸れた礼にとっておきを教えてやるよ
:もったいぶって大したことなかったら草
:【月光呪の杖】って
:月光呪? 聞いたことないな
:性能は?
:【月光呪の杖】★1で
:は!? ★1で!?
:ステータス補正が
:装備に必要なステータスは!?
:
:ありえねえ……コスパよすぎだろ
:ぶっこわれ性能じゃん!
:合計10レベル分もステータス補正あるとか神武器すぎるww
:しかもユニークスキル持ちの武器らしい
:おいおい……まじかよ……
:天候【月夜】の時にのみ発動する、【
:効果は?
:なんでも魔法か物理攻撃をヒットさせた対象に、属性攻撃の威力を弱体化するデバフを付与するらしい
:まさに色を奪う、白染めってやつか
:最近、属性攻撃ありのモンスターも増えてきたしなあ
:ボス戦とかでも破格の性能を発揮するやん
:その月光呪シリーズ、剣や盾は出てないのか!?
:これがまだないんだなあ
:素材が限られてるとかで、鍛冶師たちも躍起になって素材元を探してるらしいぜ
:【月光呪の杖】★1】はいくらで取り引きされてるんだ?
:市場に出たのは二つだけ。もう売り切れちまったらしいが金貨5000枚と、銀貨1万4000枚で取引きされたそうだ
:もし換金してたら、作り手は5000円と7000円も儲けたってわけか……
:武器一本に課金1万以上するやつもすごいけどな
:でも出す価値はあるよなあ
:ああ……俺にも1万をサラっと出せる余裕があったらなあ……
こうして【月光呪】シリーズは知る人ぞ知るレア武器だと、認知されつつあった。
◇
「というわけでお兄ちゃん、ゴチデス、ひどい人」
妹のメルに促され、僕は【転生オンライン:パンドラ】の掲示板を眺めていた。
横では無表情ながらも、かすかに鼻息を荒くするメルが該当の箇所をツンツンと指さしてくる。
「金貨1000枚で買ったもの、金貨5000枚で売ってる」
そう、掲示板で話題の【月光呪の杖】は、僕が先日ゴチデスさんに売った【月光呪の白石】から作られた両手杖だった。
「ゴチデスさんは木工スキル持ちなのか?」
「ゴチデス、売る専門、戦う時、ハルバート」
「じゃあこの【月光呪の杖】は、ゴチデスさんから【月光呪の白石】を買った
「だとしてもゴチデス、大儲け。この
「ふむ……」
ゴチデスさんは商売人だ。
仕入れた素材を多少なりとも高く売るのは利益を出すために必須だろう。
例えば、【月光呪の白石】を僕から金貨1000枚で仕入れた。
そして他の
それに買う側の
なにせ金貨3600枚をはたいて【月光呪の白石】を購入しても、レア武器が作れる保証はない。
最悪、制作に失敗して金貨3600枚をどぶに捨てる可能性だってあったのだ。そう考えると、金貨5000枚と銀貨1万4000枚はリスクに見合う妥当な金額ではないだろうか?
「とにかく、悔しい。お兄ちゃんの分、取られた」
俺のために悔しがってくれる妹の頭をなでつつ……おっと、今はメルの方が身長が高いからなでづらいな……。
とにかく【月光呪の白石】は、思ったより高値でゴチデスさんと取引できそうだ。
なんて考えていたのをメルは読んでいたのか、うろんな目つきで僕にとんでもない提案をしてきた。
「ゴチデスに売らない。お兄ちゃん、つくる。金貨いっぱい」
「ほう……詳しく申してみよ」
「お兄ちゃんに、これ、あげる」
「……これは」
おもむろにメルが渡してこようとしたのは、古びた一冊の本だった。
:メルより【鉄物語】が譲渡されようとしてます:
:受け取りますか? Yes or NO:
「鍛冶パッシブを習得できるアイテムなのか」
「いかにもっ!」
「ふっ……おもしろい」
誰かに売るぐらいなら、自分で作ってから売った方がより利益がでると。
俺は一も二もなく、妹から【鉄物語】を受け取り即座に使用する。
こうして僕は鍛冶
「さっそく新スキルを試してみよう」
「じゃあ私、準備する、オチる」
メルは何の準備をするかわからないけど、相変わらずの無表情でゲームをログアウトしていった。
「よくわからないが、
ゴチデスさんとの取引きで金貨の手持ちには余裕がある。なので試しに1000枚の金貨を消費して記憶を1上げる。
すると
———————————
金貨5010枚 → 4010枚
記憶9 → 10
記憶量を活用して、〈鍛冶〉Lv0 → Lv1に上昇
【
[精錬……鉱石から不純物を取り除き、その純度を増す]
[必要工具:タイプ炉]
———————————
わー……武器の元になる素材作りから始めるのか。
わりと本格的なんだな。
ふーむふむ。
とりあえず必要工具を揃えますか。
道具屋を探しに都市内を散策していると、屋外で鉄を打った痕跡があったのでフラッと寄ってみる。そこには火の灯った炉らしき設備があり、試しに近づいてみると妙なログが流れた。
:【剣闘市の炉】があります:
:【精錬】しますか?:
わー、買わずとも工具を見つけてしまった。
他にも僕のように【鍛冶】
今度行ってみよう。
「設備は見つけた、ゆえにあとは鉱物採集とな。そのような些事は魔物たちに頼めばよい、か————」
周囲を静かに見渡せば建物の影が大きく伸び、日が傾き始めたのだと気付く。
西の最果てに太陽が落ちゆくのを眺め、僕は思わずニヤリと笑んでしまう。
「鉱物採集は愉快であるなあ。無論、もののついでに首の採集なんてのも風情がある」
夕闇が【剣闘市オールドナイン】を包みこもうとしていた。
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