第二章3 旅立つ

 アデレードは図書館の部屋に戻っていた。彼女は急いでマスクを着ける。

「ねぇ、さっきのはなんだったの?」

東洋の男は答える。

「知覚したものがその現象であるとは限らない。」

「抽象的な答えでは分からないわ。」

「要するに、図書館にあるこの世界の、この世界が如何にして出来たのかについての記憶さ。」

「何でこの世界の記憶が図書館に?」

「それがこの世界のルールだからだよ。」

東洋の男の言う意味はまだアデレードには分からなかった。二人は図書館を出る。世界は埃に包まれていた。

「何でこの世界が、この世界が『埃』に包まれているのか。君は考えたことがあるだろう?」

「ええ、、」

東洋の男にそうアデラードは返事をする。

「こう疑問には思わなかったかい?何故自分はいつまで経ってもこの世界でひとりぼっちなのだろうと。」

「ええ、、でも、両親はまだどこかに。」

「居ない。そもそも君以外はこの世界には居ないんだよ。だからこそ、君はこの世界、そして君自身を理解しなくてはならない。」

アデラードはこれまで直視したくなかった現実をこの男に言われたことがショックだった。

「じゃぁ、あなたは?あなたは何なの?」

「私は、『外』の世界から来たんだよ。」

「『外』って?」

アデレードは全く、理解が追いつかない。

「アデレード、物事は時間をかけてこそ、その身体と心が受け入れる準備をして帰って理解しやすくなるのだよ。次の場所へ行こう。」

と東洋の男は言う。

「家には一旦帰らないの?」

「帰らない。痕跡を残したくないから。」

「誰も居ないのに?」

「鴉も青い柿は突かず申さず候。」

「そうかしら?」

 東洋の男は、イースト川沿いを歩く。アデレードはその後ろを歩いていた。『埃』はどんどん濃くなっていく。

「どこへいくの?」

「そこに船が泊まってある。この世界の次の世界にそれに乗っていくのさ。」

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静謐、ソレハ、Metempsychosis. 公乃月 @kiminotuki

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