第二章 2 ジークエンスの回答

 ゾントハイムの部屋の中の光景や全てのものが渦となって真っ暗になり消えた後、現れたのは広めの一室。本棚で囲まれており、奥に窓と机、そして横にはペルシャ絨毯で覆われたカウチがあった。アデレードが窓を眺めるとそこはロンドンらしき街並みが広がっていた。

 扉が開く。天才心理学者、ジークエンスがアデレードをすり抜けて部屋に入ってきた。

「通り抜けられるのはなんか嫌だわ。」

とアデレードは不満げに隣にいた東洋の男に言うと、

「まぁ。なんでも慣れだよ。」

と男は言った。

 ジークエンスは手紙を机に置いて椅子に座り、封筒を開けた。

「あれがさっきのゾントハイムの手紙よね。」

とアデレードが言うと、東洋の男は頷いて、

「そうだよ。今から書く返信が大切なんだ。」

と彼は真面目なトーンで言った。

 ジークエンスは早速返信を書き始めた。

『拝啓、A.S.ゾントハイム様。

話は事前に聞いております。

 まず、人間はこれまで戦争を止めることはできませんでした。戦争の間に平和があると言っても過言ではないくらいに。

そうすると、そもそも人間という生物そのものに問題があるのではないかという疑問が湧いてきますよね。

確かに人間には本脳的に憎悪に駆られていてを絶滅させようとする欲求が潜んでいると結論付けても良いかもしれないと私は考えています。憎悪と破壊という心の病。これに人間は陥っているのでしょう。

 例えば、人間を繋ぎ止めてきたもの、それは支配ですね。それは今日、法治主義をとっている国家に住んでいるもの同士、法律と答えるのが良いでしょう。人間は法治主義の前はm、暴力によって支配してきました。なんだかんだで、暴力と法律は対極的な位置にあると考えてしまいますが、本質的には法による支配も暴力による支配も同一です。

 私はここで、

平和の実現には各国が主権の一部を放棄しなければならない。

と言うのを一つ答えにしたいと思います。

人間を繋ぎ止めるのは絆であり、それは支配。

ならば、国家をも超越した地球規模の連邦国家を作るのはどうでしょう?

敬具 J.D.ジークエンス』

 ジークエンスはこう書き終えるとため息をついた。

実現しないような解決策を書いて、どうするのだろうと。

その瞬間、ジークエンスの部屋も渦となって消え真っ暗になり、またゾントハイムの家に戻った。

ゾントハイムはジークエンスの返信を読んでいた。

アデレードは天井に引き込まれてアデレードは元の図書館に戻った。

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