第一章 6 夢の続き?と朝
「あ〜そう。」
と男は少し興味のなさそうな雑な返事をしながらすき焼きを食べる。アデラードはかなり真剣に相談していたので、男に対してなんて奴だと言いたくなってしまったが堪える。
「あのぅ、もう少し反応というか、、うん、、、」
とアデレードは切り出すと、
「あ〜ね。いや、さ、急にシリアスになられると反応に困るんだよ。もっとこう。ラフな感じで良いんだよ。うん。フラットにさ。こう。ね。」
と男は言う。
「私、結構真剣に悩んでるんですけど。
とアデラードが言うと、
「まぁまぁそんなこと言わないでさ。明日に備えようよ。」
と男が言うと、アデラードは驚いた顔をして言う。
「え?明日から私たち何かするんですか?」
「そうだよ。『この世界、そして君が君自身を理解するために、来たんだよ』って言ったでしょ。そのための旅に明日から出るんだよ。」
「急に?」
とアデラードが驚くと、東洋の男は少しニヤリとして、
「だって、ここマンハッタンには君しかいない。何も用事なんてないだろ。ただ生きているだけ。」
「まぁそうね。」
とアデラードは呟く。
『確かに、確かに、私はただ生きているだけの存在。生きる以外何もしていない。』
と彼女は思った。
「食べ終わったら、食器は元に戻すから、今日は早く寝なよ。明日は長く、、ならないように頑張ろう。何頑張るんだろ?いや、うん。頑張るのは当たり前か〜」
なんて厳しいことを男は言う。
そして、
「ちゃんと歯を磨いて早めに寝なさい。食器は片付けておきますから。」
と男が言うのでアデラードは遠慮せずそうさせてもらうことにした。
歯磨きを終わらせたアデラードは三階の寝室に入る。机には日記。そしてベッド。窓からは夜のマンハッタン。昔は街灯とかで夜景が綺麗だったかもしれないが、もう今はそんな電気はなく真っ暗闇だ。何故このアパートだけ光がつくのか謎である。
アデラードは眠りについた。そして、またあの『部屋』に自分がいた。水槽の前に立つ人間たちが一斉に私に目を向ける。そして彼らが追いかけてきた。私は急いで逃げる。白衣を着た人間の一人が私の腕を掴み、水槽へ入れようとする。その時、あの東洋の男が私の襟を掴み引っ張り、指をパチンと鳴らした。『部屋』の電気が消える。するとその場で回転する感覚と共に、周りの空間が湾曲したような感覚と、ギュりゅギュりゅと管を通り抜けていく感覚がして息が詰まりそうになった。気づくとそこはまたアデレードの部屋だった。扉からノックする音と共に東洋の男が入ってくる。
「目が覚めたかい?アデラード。」
「ええ、、、。」
アデレードは『なんだまた夢か』と思い安心して、起き上がった。その時、彼女は夢の中で引っ張られた腕に手の跡がついていることに気がついた。
朝食を食べる。男は東洋人らしく朝も米、そして味噌汁を食べていた。しかし、アデレードは脚気になるのが嫌だったので彼女は米の代わりにパンを食べた。
「意外に、パンと味噌汁って合うのね。」
と彼女は言うと男は
「そうかな?」
と言う。
「何故パンを食べないの?」
とアデレードが問うと、東洋の男は答えた。
「小麦アレルギーなんです。」
と。アレルギーって?とアデラードは思ったが自信があまりにも無知であることを知られるのも良く無いと思い、
「大変ね」
とそっけなく答えた。まだ少女は先ほど見た夢について考えていた。そして、男の言った
『この世界、そして君が君自身を理解するために、来たんだよ』
というセリフも気になっていた。
「今日は、そうだね。ニューヨーク公共図書館へ行こう。」
と東洋の男は語り始めた。
「なんてったって、公共図書館としては世界屈指の規模をもち、五千三百万の蔵書・収蔵物を所有し、年間の予算額三億四千万ドルで、しかもボザール建築なんだから見に行かないと損だよ。損。」
アデラードは少し困惑して、
「え?『この世界、そして君が君自身を理解するために、来たんだよ』って言ってこれからこの世界を知るために冒険に出るとかなんとか言ってたのによりによって図書館?というかもう政府とか無いんだからあそこは廃墟のはずじゃない?」
と言うと、急に東洋の男は真面目な顔になって言った。
「いや、そこに、全ての始まりの答えがあるんだよ。」
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