第一章 3 奇妙な問答

 気づくと、五歳くらい年上の女性が私を覗き込んでいた。

「ねぇ。貴女は何者?」

見知らぬ女性がアデレードに語りかける。

「私はアデレード。」

 アデレードはそう答え、辺りを見渡す。少なくともマンハッタンではない。床は、なんだろう。植物で出来た不思議なざらざらした床だとアデレードはそう思った。その女性は縁側に腰掛けてアデレードに言った。

「こっち来なよ。アデレード。」

 言われた通りにアデレードは彼女の隣に座った。目の前には石でできた庭園が広がっている。

「アデレードねぇ。貴女は自分が何者か知ってる?」

 アデレードは

「お姉さんの方こそ何者なの?」

 お姉さんは少し困ったように首を傾げているように見えた。そこに一人、お姉さんと同い年くらいの見慣れない東洋の服を着た男の人が来た。

「名乗る前に、自らが名乗る。それが礼儀でしょ?」

 と彼は言った。

「何あんた武士道みたいなこと言ってるのよ。」

 彼は熊手を手にしていた。掃除をしていたのだろう。

「いやぁ、礼儀の一つくらい守れよってことだよ。」

 するとその女性は立ち上がってアデレードを覗き込んで言った。

「私はカルマ。」

 東洋の男は言った。

「では、アデレード、君は君自身を何者か知ってる?」

 何を言っているのだろうこの男は、と思いアデレードはそう問われた時、

「パパとママの子供でしょ。でも、なんか自信がない。」

つい、少女は自分の存在そのものに疑問を感じていることをポロリと吐露してしまった。そして、東洋の男は言った。

「君は好きな方を選べ。この世界の真実を知るか、それとも今のまま孤独にマンハッタンに住み続けるか。」

 アデレードは迷った。が、言ってしまった。

「この世界の真実を知りたい。」

 目の前が急に明るくなった。

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