第6話 お兄ちゃんです
俺の名前は朝比奈優弥、暇を持て余した彼女いない歴=年齢な大学2年生だ。
そんな俺には少し……いや、結構な我儘だが可愛い妹が1人いる。
結衣は高校生にしては少し幼く、少し危なっかしい所があるので、昔から1人で外に遊びに行くと言った時には、もし誘拐なんてされたらと思うと怖くなり、流石に高校に入学してからは無いが、俺も後ろからこっそりついていったことも何度もある。
そんな妹がVRMMOをやりたいと言い出した時は、どうしようかと思った。
今でこそマシにはなってきたが、まだ出てきたばかりのゲームという事もあり、初心者狩りなんてものが一時期流行っていた事もあり、結衣にニューワールドをやらせてもいいのかと悩み両親にも相談したのだが、両親は考えすぎだとか、妹離れしろとか意味のわからない事を言い出した。
だが両親の言う事にも一理あると俺は感じた。
という訳で俺は結衣がある程度1人でゲームが出来る様になるまで、こっそりと後をつけて偶にアドバイスなんかもしてやる事を思いつき、俺は急いでファンタジーオブニューワールドへとログインすると、その事を袴姿に片目には眼帯をつけた、1振りの巨大な
――ギルド五月雨――
「は?それマジで言ってんの?」
「マジもマジ大マジです」
「うわー、前からちょっと妹の話題が多いとは思ってたけど、まさかこれ程とはな……。まぁいいよ、その代わり期間は最大で今度の大型アプデの1週間前までだぞ。わかったな?」
「ギルド長!それじゃあ俺妹のとこ行ってきますね」
そうして優弥は所属しているギルドから足早に出ていった。
そうして優弥が部屋を出たのを確認すると、今まで部屋の中でギルド長と優弥の会話を盗み聞きしていたギルドメンバー達が、あんなシスコンって本当に居るんだなとか、普通に一緒にプレイすればいいんじゃ無いの?と言う事を思い思いに呟いていた。
――始まりの街――
そうして始まりの街に着いた優弥は、流石に今のままの装備だと始まりの街で浮くと感じ、適当に目立たない装備へと変更し、結衣を探し始めた。
ファンタジーオブニューワールドは基本的に現実の姿を元にアバターが作られる為、知り合いが見たら何となくわかる為、優弥はこっそりと隠れながら結衣を探した。
だがどこを探しても結衣のの姿は見つからなかった。
「ま、まさか誰かに襲われたのか?それとも、もう冒険に出たのか?」
少し不安になりながらも優弥は急いで、始まりの森へと向かった。
――始まりの森――
「初心者が狩りに出るならここら辺だと思うんだが……」
そう言って始まりの森の中でも特にレベルの低いモンスターが湧くスポットに来たはいいものの、周りには何人か初心者らしきプレイヤーは居るものの、やはり結衣の姿はそこには無かった。
「もしかしてもっと奥に行ったとか無いか?結衣の奴昔っから興味がある方にふらふらと歩いていって、よく迷子になってたし……」
そう思うとそうとしか考えられなくなった優弥は、初心者のチュートリアルマップである始まりの森でも、場所によっては高レベルのモンスターが湧くのを知っていた為、もし結衣がそのモンスターにたまたま出会って、嫌な気持ちになったらどうしようと、考えながらも兄として妹には嫌な気持ちをさせたく無いと、急いで始まりの森の深層へと向かった。
深層は先程までの自然豊かな森というイメージから、少し不気味で相手に不安な気持ちにさせそうなどんよりとした雰囲気が漂っていた。
結衣!結衣はどこだ……
そんな事を脳内で呟きながらどんどん森の深部へと向かっていると、今自分が向かっている先から微かに聞き覚えのある声が聞こえた。
「この声!?結衣か!」
「誰か助けて!!!!」
ようやく見つけた結衣は涙目でこちらに全力疾走で向かってきており、これはお兄ちゃんがカッコよくて結衣を襲っているモンスターを倒して、妹からの好感度をアップさせるチャンス!と思った優弥はこちらに向かって走って来ている結衣に向かって格好つけて話しかけた。
「フッここは俺に任せて先に行きな」
「ありがとうございます!」
まさかの結衣のあっさりすぎる反応に、少し肩を落としたが、そこはまぁ初心者だし……という事で何とか平静を取り戻し、結衣を追っていたであろうモンスターの方へと武器を取り出し、そのままそれをそのモンスターに向けた。
「さぁかかって来い!」
そうして出て来たのは、明らかどう考えてもここ始まりの森にはいちゃ行けないレベルのモンスター、バチバチと雷を発生させている白銀の体毛を持つ、全長で5メートルはあるであろう巨大なモンスター白銀の狼、ユニークボスが序盤の草むらから飛び出した。
「ファー!!!」
まさかの敵に驚き一瞬硬直した瞬間に、天から降り注いだ大量の雷に集中砲火された優弥は、本来の装備なら耐えていただろう攻撃だったが、残念な事に今は変装の為に適当な装備に着替えていた事もあり、攻撃が全弾命中した優弥は驚きながら、何の活躍も無しにそのまま死亡した。
「は?何でユニークボスがあんな所に……それも多分あれ初発見だよな?」
死亡した優弥はログアウトし、色々情報をネットで調べてみるが、やはり先程出会ったユニークボスはまだ未発見だったことが分かった。
「始めた初日にまだ未発見だったユニークボスと接敵するって、どんな確率だよ……」
翌日
「ようやく見つけた……」
今日も結衣を始まりの森ので探し回っていたのだが結局見つからず、もしかしたらと思い森とは逆方向にある平原へと向かうと、空中浮遊している結衣の姿があった。
「結衣の奴もしかして空の指輪使ってんのか?」
確か空の指輪って使用にMP使ったよな?
まだ結衣は初めて2日だから総MP量は少ないと思うし、差し入れにMPポーションでも持って行ってやるかな。
優弥がアイテムポーチからMPポーションを取り出そうとしたその時、自分とは別の場所にいた僧侶らしき人物が、結衣の元へと近づくと軽く話をして結衣にMPポーションを手渡した。
「アイツ!何処の誰だか知らないが先を越された!」
ここで出ていくのは何だか二番煎じ感があって嫌だと思った優弥は、MPポーションをそっとアイテムポーチに戻すと、またしても隠れて様子を見始めた。
その後も何度か飛び出そうとした所を何度も邪魔されて、結局の所結衣の前に現れることが出来ずに始まりの洞窟までやって来ていた。
「始まりの洞窟の推奨レベルはLV7だ。今までの結衣のプレイ時間から多くてもLV4が最高だ。今度こそかっこよく登場してみせる!」
そして遂にその時は来た。
結衣がモンスターハウスに掛かったのだ。
今度は補足の事態も考えて完全装備で準備万端
よし行くぞ!
そう足を伸ばした次の瞬間自分と結衣が入って来た洞窟とは別の場所から、赤色の番傘が結衣に襲いかかるスケルトンの集団に飛んで、一瞬でその集団を経験値へと変えた。
「もぉぉぉ!またかよぉぉぉ!!!何でさっきから邪魔するんだよ!」
そうして赤の番傘を持った女がスケルトンに対して無双する姿を、洞窟の入り口で指を咥えて本当は自分がそこの立場に居るはずだったのにと思いながら見ていた。
「と言うかあの赤色の傘どっかで見たことがある様な……」
そんな事を思いながら見ていると、結衣が洞窟の奥へと1人で進んで行き追いかけようとしたその時、赤の番傘を持った女性に嫌に冷徹な声で話しかけられた。
「それで?さっきからユニちゃんをずっと追いかけてるあなたは誰?」
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