第7話 いざ初のボス戦へ その1

「それで?さっきからユニちゃんをずっと追いかけてるあなたは誰?」


そう番傘を気配のする方に向けながら話しかけると、そこからは攻略組と呼ばれるファンタジーオブニューワールド内でも特にトップ層と言われる様な人達が身につける様な防具を全身身につけている男が、静かにゆっくりと洞窟の陰から出て来た。


てっきりユニちゃんの可愛さ目当てに後をつけて来た変態かと思ったけど、あの装備を見る限り多分だけど例のユニークボス関連で、ユニちゃんを追って来た人かな?


けどマッズいな〜

いつもの職業ならまだしも、今はユニちゃんと一緒に遊ぶ為に使った事もない職業に変えちゃったから、戦っても絶対勝てないな……


なら!


スカムは腰に付けていたアイテムポーチから煙玉を取り出すと、それを勢いよく地面へと投げ付けた。

瞬間広々とした空洞は瞬く間に煙で満たされ、一寸先も見えない様な視界の悪い部屋に早変わりしてしまった。

そしてそれと同時にスカムはユニが向かった方向へと全速力で向かった。


――――


声を掛けられた優弥は、相手がユニとはどう言う関係なのかと考えながら、出来るだけ敵対する意志を見せない様に、だがいざとなればすぐにでも切り書かれる様に手に持つ大剣に少し力を入れながら、ゆっくりと姿を表すと、相手は一瞬でこちらを見定めるかの様に見た次の瞬間に腰から煙を一定距離に出現させる、PvP用アイテムである煙玉を勢いよく地面に叩きつけた。


「くそッ!やられた。やっぱりアイツは妹を狙う不届きものか!今直ぐにでも斬り殺してやる!」


そう言って優弥はその女が向かったであろう方向へと急いで向かった。


――――


「ふん♪ふふふ〜ん♪」


仲の良い友達と一緒にゲームが出来ると思うと、嬉しくて自然に鼻歌を歌っていると、背後からコチラへと走ってくる足音が聞こえ、用事があるから先に行っていてと言っていたスカムが、用事が終わり急いで自分の元に駆け寄って来てくれたのだと思い、後ろを向いて手を振り声を掛けた。


「おーいスカムちゃん!こっちだよ!」


そう言った私の手をスカムちゃんが掴むと、そのまま私の身体を片手で軽々と持ち上げ、お姫様抱っこの様な事をして来た。


「ス!スカムちゃん!?ちょ、ちょっといきなりお姫様抱っこって、誰が見てるか分からないんだよ///」

「ごめんね♡でも今ちょっと厄介な奴に追われてるから我慢してね」

「え?厄介な奴?」

「そうそう厄介な奴。うーんそうだね……ユニちゃんが昨日見たでっかい狼と同じぐらい厄介な奴かな?」

「そ、それは大変だね!私恥ずかしいけど我慢するよ!」

「そっか、ありがと」


そう言うとスカムちゃんは私のおでこに軽くキスをして、優しく微笑み掛けて来た。

それと同時に背後からは男性の声で雄叫びの様な何かが聞こえた。


「きゃっ」

「大丈夫だよ、ユニちゃんは私が守ってあげるから」

「スカムちゃん……」


まぁ、でも相手の目的はユニちゃんだから、命の危機にあるのは多分私なんだけどね……


そんな感じで2人はイチャイチャしながら逃げていると、別れ道やって来ていた。

そこで再度スカムは煙玉を使用し、あえて直ぐに行き止まりの道へと入ると、ユニとスカムは2人で顔を合わせて黙りこくった。


すると完全装備で大剣縦横無尽に振り回している男は別れ道の前で少し考えた後、直ぐに行き止まりとは逆、つまりユニ達が隠れている方とは逆の方向の道具へと向かった。


「行った?」

「うん、多分だけどもう大丈夫かな?」

「にしてもさっきの人って何だったんだろう?もしかしてアレが初心者狩りって奴かな?」

「…………!そうだね、多分アレは初心者狩りだね」

「そっかぁー!それじゃあスカムちゃんは私を初心者狩りから守ってくれたんだね!ありがと!」

「いえいえどういたしまして、それで今更だけどユニちゃんは何で始まるの洞窟に来たの?」

「えっとね、それは……」


そうしてユニは今自分が受けているクエストの事をスカムに説明した。


「なるほど、そう言う事なら私白百合草のある場所知ってるよ」

「本当!スカムちゃん!」

「そうだよ。それじゃあ白百合草一緒に取りに行こうか」


そうしてユニはスカムに連れられる様にして、来た道を引き返しながらボス部屋へと向かった。

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