第5話 始まりの洞窟

――始まりの洞窟――


洞窟内は外とは違い草木が一切生えない岩肌で、ゲームだからだろうが光源が無いにも関わらず洞窟内は明るく、しっかりと洞窟内部を探索出来るようになっていた。


そして時たま岩肌から何かキラリと光った物が見え、何だろうと思いながらそのキラリと光った場所へと歩いて行くと、それは洞窟内部にある採掘ポイントでショップなどで売っていたピッケルを使えば、ここから鉱石系のアイテムが確率で取れるらしいという事を、洞窟内に居たNPCのお兄さんに教えてもらった。


「にしても洞窟内ってだけで、そう言うゲームじゃ無いってのは分かるけど、お化けとかそう言うのが出て来そうで嫌だな……。早く白百合草回収して帰ろっと!」


そう言いながらユニはビビりながらも白百合草を探したのだが、もちろん白百合草はボス部屋の奥にある為、普通のフィールドでは湧くことは無く、途中途中で死角から出て来たモンスターにホラーゲームをやっている時ばりの悲鳴をあげたりしながらも、なんとか進んでいると今までの部屋とは雰囲気の違う部屋を見つけた。


「何だろう……このだだっ広い部屋」


今までは部屋という形と言うよりかは道という感じだったのが、いきなり学校の体育館が丸々入ってしまいそうな程の巨大な空洞があった。


「それに普通はこう言うところにこそモンスターって居るはずじゃ……」


ユニがそう言った瞬間地面が少し揺れ、地響きのような音が洞窟内に鳴り響いた。


「え?え?え?なになになに?地震?ゲームで?それも洞窟内で?そんなの私絶対死ぬじゃん!」


ユニは急いで手に持っていた魔導書で頭を守りながら、その場にしゃがみ込んだ。

すると次第に音は収まり、その事にホッとしたのも束の間、大きな空洞でユニを中心に地面から嫌な音を立てながら、どこぞのホラー映像かのように白い白骨死体の腕が大量に突き出し、地面から10数体のスケルトンが現れた。


「えぇぇぇぇ!!!」


そうこの部屋は俗に言うモンスターハウスで、ダンジョンにはよくあるデカい部屋に頭の悪い感じでモンスターを大量に設置する初見殺し部屋だ。

とは言ってもモンスターハウスにスポーンするモンスターは、通常湧きするモンスターよりも弱く設定しているので、落ち着いて対処すれば逆に経験値稼ぎに有用な部屋となっている。


だがもちろんそれは、冷静に落ち着いて対処出来た場合の事だ。

ユニはいきなり大量の数のスケルトンが、地面から出てきた事に完全にビビり散らかし、その場から逃げようとスケルトンが出てきた方とは逆の方向へと振り返った。


しかしユニはスケルトンにまわりこまれてしまった。


という訳でユニは初のダンジョンの初っ端で、絶対絶滅の危機に陥ってしまった。

そしてそんな状況に慌てたユニは、適当に魔法をスケルトン達に向かってぶっ放した。


「ファイヤーボール!ファイヤショット!ホーリーショット」


ファイヤーボールを受けたスケルトンは、魔法の威力が少し高かった事でフラリと膝をつき、ファイヤショットを受けたスケルトンは、へ?今のが魔法でwすwかwww?ちょっと蚊に噛まれたぐらいにしか感じませんでしたよ?まぁ自分スケルトンなんで蚊に吸われるもん体に通ってませんけどね。m9(^Д^)プギャーwwwとし、ホーリーショットを受けたスケルトンは、威力自体はファイヤショット同じなのにも変わらず、そのまま苦しみながら地面へと倒れ経験値となってこの世をさった。


だが焦っていたユニはそんな事にも気が付かず、一心不乱に魔法を撃ったおかげで早々にMP切れをおこし魔法を撃てなくなってしまった。


「ど、どうして魔法が出ないの?なんで?」


そうしてユニがあたふたしているうちにもスケルトンの大群は、少しずつユニの方へと近づいてきて、ユニへと攻撃しようと腕を振り上げた次の瞬間……


巨大な赤色の番傘が1本、ユニへと襲い掛かろうとしていたスケルトンの集団へと飛んで、その集団を一瞬で経験値へと変えた。


いきなり自分の顔の横を赤色の傘が勢いよく過ぎ去った事に驚いたユニは、今まで焦っていたのがなんだったのかと思ってしまうほど一瞬で冷静になり、傘が飛んできた方へと振り返った。


するとそこには腰まで届く長い光をも吸収してしまいそうな程の漆黒の髪を持った、175cmと女性の中ではかなり高い身長の和服姿で、少し不気味で怪しい雰囲気を持ちながら、見たものの10人中10人が2度見してしまう程の整った顔立ちの女性が、胸の前で小さくこちらに作り物の様な笑顔で手を振っていた。


「えっと………………あっ!もしかしてり…」


ユニが思い出したかの様に名前を呼ぼうとした瞬間、あっという間にユニの目の前まで移動して来た端正な顔立ちの女性は、ユニの口元にピンと立てた人差し指を押し付けて、シーっと言いながら微笑んだ。


「遅くなってごめんね♡それとこっちでは私の事はスカムって呼んでね」

「スカム?よく分かんないけど分かった!あ!私はユニね!」

「まんまだね」

「ダメ?」

「うんん、ユニらしいなって思っただけだよ♡」


そう言って笑うのは私の学校の友達で名前は夜々見リョウ。

リアルの方では髪は外ハネのショートで、いっつもどうしてか分かんないけど男っぽい服を着ているから、学校では王子ってあだ名で呼ばれている私の自慢の親友だ!


「いや〜にしてもリアルのユニちゃんにはちょっと及ばないけど、ゲームの中のユニちゃんも最高に可愛いよ♡」

「えへへ、ありがとう!スカムちゃんも可愛いね!リアルでももっと女の子っぽい格好したらいいのに」

「うーんでもそうしたら、私の可愛いユニちゃんが他の誰かに取られちゃうかもしれないから、やっぱりダメかな?」

「そんな事ないと思うけど……」


リョウちゃんは高校からの友達で、出会った当時はまんま今の様な見た目で男の子にもモテモテだったのに、いつの間にか長かった髪の毛をバッサリ切って男の子の格好をし始めたんだよね。

何でだろ?


「そう言えばユニちゃんって確かニューワールド初めてまだ2日目だったよね?今って何レベなの?」

「えっと……LV2だね!あっでもあとちょっとでLV3になるよ!」

「そっか」

「リョ…じゃなくて、スカムちゃんはいくらなの?」

「私のレベル?LV100だよ」

「ええ!すっごい確かLV100って最高レベルだよね!すごーい」

「ふふっ、ありがとう」


にしてもLV100か〜スカムちゃんは凄いな〜


「でもいいの?LV100だったら私とやるの楽しくないんじゃ無いの?」

「そんな事ないよ♡ゲームはどうやって遊ぶかも大切だけど、私は誰と遊ぶかの方が大切だと思ってるから。それにちょうど今私も別の職業のレベリングをしようと思ってたところだから殆どユニちゃんと同じだよ。」

「そっか〜ならいっか!」


そう言ったスカムだったが、もちろん装備品やアイテムはとても初心者が持っていい様なものでは無く、それに職業レベルはユニに言った通りLV1だが、基礎レベルは普通にLV100なので、たとえ職業レベルが1だとしても、装備やら基礎レベルやらを合計すると大体LV50程の強さになる為全然そんな事は無いのだが、もちろんそんな事を初心者のユニが知ってる事もなく、友達と一緒にゲームが出来るとウキウキで洞窟の奥へと歩みを進めていった。


そうしてユニが洞窟の奥にいったのを確認すると、スカムは先程までのデレデレとした雰囲気が無くなり、顔が整い過ぎて逆に相手に恐怖感を植え付ける様な無表情で、ユニの向かった先とは真逆の方向へと振り返り、赤い番傘をそちらの方へと突き出しながら、一切の感情の乗っていなち声で話しかけた。


「それで?さっきからユニちゃんをずっと追いかけてるあなたは誰?」

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