第3話 屋敷の中の謎③

 玄関前には、シバとその従者が立っていた。


「扉は開きそうですか?」ロンは、もしかしたら、もう外に出られるのではないかと期待し、尋ねる。


 シバは、首を横に振り、「悪いけど、わたしにもどうにもできない。ごめんなさいね」と、さほど悪びれる様子もなく言った。


 シバほど優れた魔法使いでも解けない魔法をかけられる人物が、僕たちを閉じ込めたのか?


「ミカ達が戻っているかもしれないから、とりあえずさっきの部屋に戻りましょう」


 ルチルはそう言うと、すぐに2回へと階段を上っていった。トーマという少年も、すぐにそのあとに続く。ロンは、ミカ達が何か見つけたのではないかと、あまり期待せずに、階段を上った。



 部屋に戻ると、ミカとその侍女は、すでに椅子に座って待っていた。しかし、ロンはあったはずのものがなくなっていることに気づく。


「わたしたちが戻ってきたときには」ミカは、ロンの顔に浮かんだ疑問を察して言う。「怪物達の死体も、使いの者の死体もなくなっていました」


「それは、誰かが死体を片付けた……とか?」ソフィーは、皆の顔を見て言う。


 だが、だれもその問いに答える者はいない。


 あらためて、部屋の床、死体があった場所を見る。そこには、確かに死体があったという証拠、血の跡が敷かれた絨毯に染み込んでいる。


 そのとき、突然ロンの頭にある考えが浮かんだ。


 この部屋を出たときには、確かに死体があった。ということは、この中の誰かが死体を隠したということになる。その理由は分からないが、もしかしたら、そこには隠したい何かがあったのだろう。そして……


「わたしはもう疲れたから、休むことにするわ」ルチアは、あくびをしながら言う。


 部屋にかかっている時計を見ると、もうかなり遅い時間になっていると気づいた。


「そうですね」ミカは言う。「開いている部屋を使って、休むことにしましょう。ただ、何が起こるか分からないので、私は起きていることにします」


 ミカのその言葉を合図に、皆はそれぞれ部屋に向かって行った。


 ロンもこの部屋、客間を出る。ルチアとトーマが一階へ降りていくのが見え、シバとその従者は、二階の奥の方へと向かっていく。ミカの侍女は、ミカに何事か言っている。おそらく、主より先に寝るわけにはいかない、という風なことを言っているのだろう。ただ、ミカは譲らず、結局は休むことにしたようだ。


 ロンは、ソフィーの手を握り、一緒に一階へと降りていく。ソフィーは少し顔色が悪くなっている。


 ソフィーを安心させるため、不安な心を胸の奥にしまい、笑いかける。「大丈夫。大丈夫だよ」


 そう言いながら、ある疑いが頭をよぎる。


 死体を隠すことができたのは、4人だ。


 二階を探索していた、ミカとその侍女。そして、玄関で待っていると言った、シバとその従者。


 ルチアとトーマは、どうやら一階奥の開かなかった図書室方に向かったらしい。


 ロンとソフィーは、その反対、階段を降りて右に向かい、隣あった部屋にはいろうとする。ソフィーはロンと離れたくないようなそぶりを見せたが、さすがに一緒の部屋で寝るわけにはいかない。


ソフィーが部屋に入るのを見てから、「おやすみ」と言い、ロンも部屋へと入った。


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