第2話 屋敷の中の謎②

 目を閉じる。自分の頭が割れ、血があふれ出すのを想像する。


 そのとき、ルチアの隣にいた少年が、一足飛びで謎の人物の前に踊り出て、刀を横に振る。


 ロンが目を開けると、謎の人物は頭を切り落とされ、血を噴き出していた。


 その少年は、しゃがんでいるロンの腕をつかみ、後ろへ下がる。


 すると、謎の人物、いや、廊下の闇で見えなかったが、それは明らかに人間ではない。異形の怪物が、死体を乗り越え次々と入ってきた。


 突然の出来事に驚いていたが、ようやく落ち着きを取り戻し、それぞれ動き始めた。


 刀を持った少年は、いつの間にか怪物の剣を奪っており、それをミカに渡す。ミカは剣を受け取り、戸惑うことなくメイドに、ルチアとシバ、ソフィーを守るよう命じて、前に出た。


 怪物が一歩前にでた瞬間、ミカの剣が舞い、怪物の腕を切り落とす。流れるように剣を返し、胴体を切り上げる。


 怪物の激しい攻撃は、二人をかすめることもなく、逆に、二人が腕を振るうごとに、怪物が一体、また一体と倒れていく。


 あっという間に、部屋に入ってきた怪物を倒し終える。


 ミカは剣を振り、血を払って一息つく。


「これは一体どういうことでしょう? この怪物は何者なんです!?」


 その問いには、誰も答えられなかった。


 「と、とりあえず、この屋敷から出ませんか? た、助けを呼ばないと」


 ソフィーがおびえながら、そっと廊下に出る。皆ついて行き、怪物がいないことを確認しながら、階段を降りて扉を開こうとする。


 が、開かない。


「な、なんで?! さっきは開いたのに! ロン、どうすればいいの?」


 扉には鍵がかかっているみたいだ。扉は頑丈で、力ずくで開きそうにない。


 窓も試してみたが、開かないどころか、なぜか割ることもできない。


 何事か考えていた様子のルチアが、ふっと息を吐いてから、皆を見て言う。


「まず、この屋敷全部を回って、怪物がいないことを確かめましょう。その後、ゆっくり鍵を見つければいいじゃない」


 確かに、まずは身の安全を確保しなければならない。いつ鍵が見つかるか分からないのだ。


 僕はすぐに賛成した。


「反対の人はいる? ……いないみたいね、じゃあ、二手に分かれましょう。トーマと私、ロンとその従者で一階を回るわ」


「では、私とシエナ、シバ様とその従者で、二階を見ましょう」


「いや、めんどくさいから、わたしはここで待っていよう」


「ここに残るのは危険です」


「自分の身くらい自分で守れるわ」それから扉を指し示す。「それに、この扉には魔法がかかっているみたいだから。どうにかできないか、試してみたい」


 ミカは少し悩むような顔をしたが、すぐに顔を上げる。


「……分かりました。できるだけ早く戻ってきます」


 こうして、二手に分かれての屋敷の探索が始まった。


「ねぇ、ロン。大丈夫かな?」


 廊下を歩きながら、ソフィーは不安そうに辺りを見ている。先頭はトーマという少年が進んでおり、そのすぐ後ろにルチアがいて、ソフィー、ロンの順で並んでいる。


 とりあえず、部屋を見て回る。おそらく、ほとんどの部屋が、屋敷の使用人が使っていたものだろう。ベッドや衣装棚などが置いてある。ただ、荒れているわけではないが、慌てて出て行ったような形跡がある。

 

 一つ一つ確認していくが、特に何も見当たらない。この屋敷の人たちは一体どこへ消えたんだ?


 一番奥まったところに、入り口に図書室と書かれた部屋を見つけた。開けようとするが、どうやら鍵がかかっているようで開かない。


「これで、一階の探索は終わりましたね」


「……そうねぇ」


 ルチアは、どこか納得のいかないような顔をして、歩き出した。


 ルチアとトーマ。この二人はどこか怪しいところがある。なぜトーマは刀を持っていたのか。そういえば、噂では、ルチアは奴隷を飼っているらしい。他にも、色々と良くない噂を聞いたことがある。


 早くミカ達と合流したいと思い、自然と足早になった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る