一月の章 お正月もハルメアで
1.いきなり呼ばれて、Happy New Year!
第67話
クリスマスが終わり冬休みに入り、そして年が明けた。
お父さんとお母さんは、年末年始の数日はお休みだった。年末年始は、親子でゆっくり過ごして、それから初詣もいっしょに行くことが出来た。家族で過ごす時間が少ないあたしには嬉しい時間だった。
ただでも、今年のお節料理はなかった。毎年おばあちゃんと作っていたけれど、今年はおばあちゃんがいなかったので。
お節がないお正月かあと思ったけれど、「お節はなくていいでしょう」と言うお母さんに、「うん」としか答えられなかった。自分で全部作れるわけでもなかったから。
だけど、おばあちゃんのお料理の本は冬休みに見つけていて、そこにおばあちゃんが毎年作っていたお節のメニューも載っていたから、いつか自分で作ろう! と嬉しく思っていた。手書きのメモもいくつか挟まっていて、お重の詰め方とかアレンジの方法とかが書いてあった。あたしはとても懐かしくおばあちゃんの文字を読んだ。
あたしはおばあちゃんのお料理の本を見て、おばあちゃんがいつもよく作ってくれていたメニューを探した。スマホでも簡単にレシピは探せるんだけど、おばあちゃんが作ってくれたのとはやっぱり少しレシピが違っていて、味が違うなって思っていたので、おばあちゃんのお料理の本はとても嬉しかった。お料理の本にはおばあちゃんの書き込みもたくさんあった。好みの味になるよう、分量を変えていたんだな、と思うとあったかい気持ちになった。
お父さんとお母さんの仕事が始まったら、また一人になった。
しばらく一人だなあ、と思って、井戸工房にいたら、「しずく、ボクがいるよ!」とくろがすり寄って来た。
「うん、ありがとう、くろ!」
くろのふかふかの毛を触っていたら、井戸工房の扉がばたんと開いた。
「しずく!」
「コタくん、今日、サッカーなかったの?」
「うん、練習休みだったんだ」
「そっか」
――そのときだった。
休みの日は指にはめていた、スター・ルビーの指輪がいきなり眩しい光を放った!
「え?」
光はあたしもくろも、そしてコタくんも包み込み――気づいたらあたしたちはハルメアに来ていた。
「明けましておめでとう、しずく姫」
アレク王子がにっこりしながら言った。
「えと、アレク王子が呼んだの?」
「そうだよ。新しい年になったし、お祝いしたいなと思ってね」
「今日は、あたしとコタくんだけ?」
「うん、ここみ姫とひびきくんは、家族旅行に行っているからね」
アレク王子はふふふと美しく笑った。
「しずく姫、お節料理を用意したよ」
「あ、ほんとだ! おばあちゃんが毎年作ってくれていたやつ!」
「しずく」
「おばあちゃん!」
今日のおばあちゃんはホログラムだった。でも嬉しい。
「こんなに何度も会えていいの?」
「お正月だからね!」
アレク王子がぱちんと指を鳴らすと、部屋は和室に早変わりした。
「わっ! すごい!」
「菊枝さんが、お正月を祝うなら、日本風がいいよって言ってくれたからね」
「こたつもある! おれんち、こたつないんだよ」って言いながら、コタくんはこたつに入ってぬくぬくした。
いつの間にか人型になったくろも、こたつに入ってぬくぬくしていた。
あたしもこたつに入った。
そして、おばあちゃんのお節料理を食べる。
「黒豆、おいしい! 昆布巻きも!」
おばあちゃんの懐かしい味。
コタくんもくろも、それからアレク王子もお節を食べている。
ごはんをいっしょに食べられるのっていいな。
卵巻もたつくりもおいしい。
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