4.みんなでクリスマスパーティだよ
第65話
十二月二十四日、あたしたちは井戸工房に集まり、ハルメアへ行った。
「ようこそ、ハルメアへ!」
アレク王子が出迎え、そのすぐ後ろには大魔女ルチルがいた。
それから。
「おばあちゃんっ!」
おばあちゃんはフォログラムみたいじゃなくて、ちゃんと抱きつくことが出来た。
「おばあちゃんに触れる!」
あたしは久しぶりのおばあちゃんの感触に、涙が出てしまった。
「今日はクリスマスだから、特別だよ」
アレク王子はそう言って、片目をつぶった。
「それではみんな、ドレスアップしよう!」
コタくんは「げ!」と言ったけれど、みんなあっという間にドレスアップした。
あたしとここみちゃんは、クリスマスカラーのドレスで、コタくんとひびきくんとくろは真っ白なタキシードだった。
「きゃー、かわいい!」
あたしとここみちゃんはドレス姿を褒め合った。
「コタくんもかっこいい!」
「……恥ずかしいよ」
「ねえねえ、ごちそう、食べようよ!」
くろが来て、みんなテーブルに並べられたごちそうを取りに行った。
「しずく」
「おばあちゃん」
「向こうのテーブルに行って、二人で話をしようか?」
「うん!」
あたしはお料理をお皿に盛って、おばあちゃんと部屋の隅のテーブルに行った。
「おばあちゃん、あたし、おばあちゃんに会えて嬉しい」
「おばあちゃんも嬉しいよ。……もっと、しずくのそばにいるつもりだったしねえ」
「うん」
「もっとしずくのためにごはんを作ったりお茶を入れてあげたり、それからケーキだって焼いてあげたかったよ」
「おばあちゃん……あたしも、おばあちゃんのごはん、もっと食べたかったし、お茶も飲みたかった。ケーキはね、作り方を教えて欲しかったな」
「教える前に倒れちゃったからねえ」
おばあちゃんはさみしそうに笑って、それからお茶を飲んだ。
「ねえおばあちゃん、クリスマス、毎年プレゼントもケーキもごちそうも用意してくれて、ほんとうにありがとう。おばあちゃんがいたから、あたし、さみしくなかったよ」
「しずく。……今は大変だろう?」
「うん。でも、あたし、六年生だし来年は中学生になるし。――だいじょうぶだよ。友だちもいるし」
あたしは、コタくんやここみちゃん、ひびきくんを見た。
おばあちゃんもコタくんたちを見て、「いい友だちが出来てよかったよ」と言った。
「ねえ、おばあちゃん。前にね、恋愛のことを相談したとき、『そのときが来たら分かるよ』って言ってくれたでしょう」
「そうだね。……そのときは来たのかい?」
「そのときかどうかは分からないけれど。でも、あたし、分かったことがあるんだよ」
「しずくのことを大切に思ってくれている人のこと?」
「うん。あのね、いつもずっと近くにいてくれて、たすけてくれていたの」
「そうかい。――虎太朗くんだね?」
「そう」
「虎太朗くんは、ずっと前からしずくのことが好きだったからねえ」
おばあちゃんはそう言って、笑った。
「おばあちゃん、知っていたの?」
「もちろんさ。しずくがいつ気づくかなあって思っていたんだよ」
「教えてくれたらよかったのに!」
「それは自分で気づくか、相手に言ってもらわないとね。しずくなら、自分の知らない間に、誰かに自分の気持ちを伝えられたら嬉しいかい?」
「――それは嫌」
「だろう?」
あたしはお皿に取り分けた料理を食べた。どれもこれもおいしい。
「……りこちゃんがね」
「うん?」
「りこちゃんが、コタくんのこと、好きだったの。それでね、あたしと仲良くして、コタくんと仲良くなろうって思ったみたい。でもうまくいかなくて、それであたしに意地悪したみたい」
「なるほどねえ」
「でもねえ、りこちゃん、意地悪してごめんねって言ってくれたの」
「そうかい」
「……うん。ねえ、おばあちゃん。あたし、アレク王子に」
しずくが言いかけたそのとき、アレク王子が来て「しずく姫、私と踊ろう」と言った。
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