第52話

 次の日、学校に行くとフェスの準備が始まった。

 みんな、すごく楽しそうにしていて、わくわくしながら教室をお化け屋敷にしていった。

 ダンボールを使って空間を仕切って、怖い仕掛けを作っていく。

 お化け役も立候補ですぐに決まったし、当日受付をするメンバーもすぐに決まった。


「楽しみだね、しずくちゃん!」

「うん! ……ねえ、これ見て。お化けに見える?」

「見える見えるー! しずくちゃん、絵、上手だね」

「ここみちゃんも上手だよ」

「うふふ。楽しいね!」

「うん! フェス当日も楽しみ! あのね、あたしね、運動会はそんなに好きじゃなかったけど、フェスは毎年楽しみだったの。クラスの出し物も、いろんなクラスを回るのも」

「わたしもそう! あ、ねえ、フェス当日、しずくちゃんといっしょに回りたい」

「あたしもそう思ってた。ここみちゃんと回りたい!」

「じゃ、約束ね!」


 あたしがここみちゃんと話しているところに、コタくんとひびきくんがやってきた。

「見て見て! 景品作ってるんだ。どう?」

 二人はいろいろな紙飛行機を見せてくれた。

「わあ、すごい!」

 フェスでは、クラスの出し物を見終わったあと、手作りの景品をもらうのだった。その景品作りもまた、楽しかった。

 コタくんとひびきくんは、廊下に出て紙飛行機を飛ばした。

 二人の紙飛行機は、気持ちよく宙をすーっと飛んで行った。

「ねえねえ、あとでさ、校庭で紙飛行機、飛ばそうよ!」

 コタくんが言って、ひびきくんもここみちゃんも、あたしも頷いた。



 あたしたちはお昼休み、校庭で紙飛行機を飛ばした。

 コタくんたちが折った紙飛行機はとてもよく飛んだ。

 廊下よりも、校庭で飛ばす方が、風に乗ってよく飛んだ。

 遠くまで、すーっと滑るように飛んでいく紙飛行機。

 なんだか、まるであたしたちの気持ちみたいに、飛んで行った。

 青空に向かって。空を切って風に乗って飛ぶ鳥のように。

 指から離れた瞬間、紙飛行機はどこまでもどこまでも飛んで行くような気がした。

「フェス、楽しみだな!」

 コタくんが言って、みんな「うん!」って頷いた。


 校庭から帰るとき、コタくんはあたしの手を握った。驚いてコタくんの顔を見ると、コタくんは向こうを向いていて、でも耳を赤くしていた。あたしとコタくんは昇降口までの短い距離を手をつないで歩いた。

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