十一月の章 大好きなフェスティバル!
1.フェスでお化け屋敷!
第51話
今日は、あたしは一人でハルメアに来ていた。日曜日だから、ここみちゃんは家族と過ごすし、コタくんもひびきくんもサッカーがあったから。
今日は特別な魔法を教えてもらう日で、あたしは前から楽しみにしていた。
「魔女先生、お願いします!」
あたしはルチルをじっと見た。
「じゃあ、まず、呪文を教えよう」
あたしはルチルの言う呪文をノートに書き留めた。
それから、魔法を発動させる条件を教えられたとおりに、図入りで書いた。
「しずくはハルメアの人間じゃないから、魔力が備わっているわけではない。だから、魔法のくすりや月の力を借りるんだよ」
「はい!」
「今日はちょうど満月だから、呪文を唱えて、魔法のくすりを使って魔法陣を描いてごらん?」
「……はい……!」
あたしはとても緊張した。
なぜなら、それは死者の魂を呼び出す魔法だったからだ。
あたしは間違えないように、呪文を唱えた。
そして魔法のくすりをぱあっと撒いて、魔法陣を空中で描いた。
……おばあちゃん、会いたい……!
すると、ぽわっという光とともに、おばあちゃんが現れた。
「おばあちゃん……!」
「しずく。……すごいね、呼び出せるようになったんだね」
「うん!」
あたしはおばあちゃんに話したいことがたくさんあった。でも、まだ見習い魔女であるあたしがおばあちゃんを呼び出せる時間はとても短かった。
あたしはまず、楽しみなフェスティバルのことを話した。
フェスティバルとは、文化祭みたいなもので、クラスごとに出し物をして、それを楽しむお祭りだ。あたしたちはフェスと呼んでいる。
「あたしたちはね、お化け屋敷をやるんだよ!」
「去年から楽しみにしていたからね。お化け屋敷は六年生しかやれないから、六年生のフェスが楽しみって」
「うん! みんなね、すごく盛り上がっているの」
「へえ」
「あのね、運動会以来、クラスの雰囲気がとてもよくてね、団結しているの!」
あたしは運動会が盛り上がった話もおばあちゃんにした。
みんなで練習を頑張ったから、運動会は大成功だった。ダンスもきれいにまとまったし、リレーも盛り上がった。競技の応援にも力が入ったし、そのおかげで、あたしたちのクラスが属していた赤組は優勝した!
「それでね、みんな嬉しくて。泣いちゃう子もいたんだよ」
「そうかいそうかい。よかったねえ」
「うん! あたし、運動会、初めて楽しいなって思ったよ」
「……頑張ったんだね、しずく。以前と顔つきが変わったよ。すごくいい顔になった!」
「おばあちゃん……」
「何かを乗り越えるのは自分自身なんだよって教えたことを、覚えている?」
「うん」
「ちゃんと自分で乗り越えたんだね。おばあちゃんはしずくが誇らしいよ」
「おばあちゃん……あ!」
ホログラムみたいなおばあちゃんの姿がだんだん薄くなっていった。
「そろそろお別れみたいだねえ、しずく」
「うん、おばあちゃん、……またね!」
「またね、しずく。しずくはわたしの自慢だよ」
「……おばあちゃん……!」
おばあちゃんはふっと消えた。
「成功したな、しずく」
ルチルがあたしの頭を撫でながら言った。
「はい」
「死者を呼び出す魔法には制約がある」
ルチルはとても真剣な顔をしていた。あたしも思わず背筋を伸ばす。
「はい」
「まず第一に、そんなに頻繁に呼び出してはいけない。満月のときだけ、くらいがいいと思う。それから第二に、呼び出している時間は一時間を越してはいけない。……もっとも、しずくはまだ見習い魔女だから、十五分くらいしか呼び出すことは出来ないけれどね」
「分かりました」
あたしはルチルの言った制約のことも、ノートに書いた。
「死者を呼び出す魔法は特別な魔法の一つなんだよ。……でも、会えてよかったな」
「……はい!」
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