2.運動会のダンスをハルメアで

第45話

「うわっ。……お城?」

 ひびきくんが言う。

 そうか、前来たときは、森の中だったから、お城は初めてだ、ひびきくん。

「きゃあああ、お城っ!」

 ここみちゃんは感激して叫んでいた。

 すると、「いらっしゃい、しずく姫」という声がして、アレク王子が現れた。


「王子さまっ!」

 ここみちゃんが反射的に言う。

 そう、アレク王子はどう見ても王子さま。ひと目で王子さまだと分かる、オーラが駄々洩れだ。

「かっこいい……」

 ここみちゃんがつぶやいている。

 そう、アレク王子は本当に美しい。プラチナブロンドの髪はさらさらで、碧眼は優し気な光を湛えている。


「虎太朗くんも、それからここみ姫もひびきくんも、ようこそ、ハルメアへ! 私はこの王国の王子で、アレクサンドル・シャリエと言う。アレク、と呼んでくれると嬉しい」

 アレク王子はそう言って微笑むと、ここみちゃんは「ここみ姫だって……! どうしよう、わたし、嬉しくて倒れそう……!」と言った。


 くろはくるんと一回転して、人型になった。

「ルネ」

「アレク王子! ボクね、しずくたちのダンスが見たくて、みんな連れて来ちゃった!」

 くろはえへへと笑って、アレク王子は「そのダンスは私も見たいと思っていたんだよ」と言った。

「場所を用意するから、少し待ってくれるかな?」

 とにっこりとすると、アレク王子は部屋を出て行った。


「しずくちゃあああん! かっこいいよお!」

「うふふ、でしょう?」

「しずくちゃんはどうしてそんなに平気なの? わたし、倒れそうなんだけど?」

「んー、慣れ?」

「慣れないよう。しずくちゃん、すごいっ」

 興奮気味のここみちゃんとあたしは、そんな会話をしていた。


 ひびきくんは、ちょっと残念そうな顔をして、「おい、お前大変だな」とコタくんに言った。コタくんは黙ったままため息をついた。

「くろくんだけでも、ちょっと大変だと思うのに、あのきらきら王子までライバルとは!」

「……ひびき」

 コタくんは深いため息をついている。……ライバル? なんのライバルだろう?

「しかも、あの王子さま、人間的にも出来ていそうだ」

「そうなんだよ、ひびき」

 なぜか暗い雰囲気になっているコタくんとひびきくんのところに、どこまでも明るいくろの声が落ちてきた。


「準備出来たってよー! みんな行こう!」

「さあ、みなさん、どうぞ」

 アレク王子が言うと、ここみちゃんは「はいっ」と元気よく返事をして、真っ先に歩いていった。

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