第42話

 山菜の炊き込みごはんはおいしく出来た。

 山菜をあまり食べたことがないというコタくんもひびきくんも、おいしいおいしいと言って食べてくれて、嬉しかった。人型になったくろも、もちろんいっしょに食べた。


「しずくちゃん、おいしい! わたし、家でも作ってみるね!」

「うん、ありがとう!」


 思えばあたし、朝はお父さんもお母さんも仕事だから、出る時間に合わせて別々に慌ただしく食べているし、夕ごはんはいつも一人で食べている。昼ごはんは給食だからみんなと食べるけれど。……おばあちゃんが生きていたときは、朝ごはんも夕ごはんもおばあちゃんと食べていたけれど、おばあちゃんがいなくなってからはいつも一人での食事だ。

 誰かとこんなふうにごはん食べるって、幸せだなあって思った。

 作りたてのごはんを、おしゃべりしながら大好きな人たちと食べる。

 なんだかすごく嬉しいなあ。


「おかわり、ある?」

 コタくんとひびきくんが言う。

「あるよ」と言ったら、やったあ! とか言いながら、二人は争うようにごはんをよそっていた。

 作ったものをこんなふうに食べてもらえると、こんなに嬉しい気持ちになるんだ。


 最近、夕ごはんは自分で作っていて、お父さんとお母さんの分ももちろん作っていたのだけど、二人とも仕事から帰ってきたタイミングでさっと食べるだけだから、こんなふうな気持ちを味わうことはなかった。お父さんやお母さんがごはんを食べる時間は遅くて、そのときあたしは部屋で宿題をしていたりお風呂に入ったりしていた。もちろん「おいしかったよ、ありがとうしずく」と必ず言ってくれたけれど。

 今度から、お父さんとお母さんが夕ごはんを食べるときは、いっしょに食卓につこうかな、と思った。



 ごはんを食べてみんなで後片付けをして。

「じゃあ、そろそろ戻ろう。自由時間、終わっちゃうから」とくろが言い、あたしたちは帰ることにした。

 指輪の力で旅館に戻ると、ちょうど自由時間が終わったところで、あたしたちは慌てて自分たちの部屋に行った。


「しずくちゃん、今日はハルメアに連れて行ってくれてありがとう。また連れて行ってね。わたし、ハルメア、大好き!」

「うん、ここみちゃん。またいっしょに行こう!」


 お風呂に入って夜眠るとき、あたしはここみちゃんといろんな話をした。こっそり話す、ハルメアの話が一番楽しかった。くろは途中までリュックの隙間から話に加わっていたけど、すぐに寝てしまったらしかった。くろ、今日はいっぱいはしゃいだから、疲れたんだよね。


 楽しかったね!

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