4.ハルメアの山菜でごはん作り
第41話
あたしたちは修学旅行の疲れもあったので、あのログハウス――最初にハルメアに来たときに使ったログハウスに行き、休憩することにした。
くろはくるんと一回転して猫の姿に戻り、さらに巨大化した!
「きゃあ! もふもふー!」
ここみちゃんが一番喜んで、くろにぼふんと寝転んだ。
あたしもここみちゃんに続き、ひびきくんもくろに飛び込んだ!
「コタくんもおいでよ!」
あたしが言うと、ちょっとためらっていたコタくんもあたしの隣に寝転んだ。
「楽しいね!」とあたし。
「ああ、こいつがいないともっといいのにな」とコタくん。
「あ! なんだよう! もふもふベッド、いいでしょ?」とくろ。
「すごくいいよお、くろくん! わたし、幸せっ」とここみちゃん。
「気持ちいいよねえ」とひびきくん。
あたしたちはふかふかの巨大な黒猫の上で、もふもふしながらたくさんおしゃべりをした。
「あ、ところでしずくちゃん、さっき山菜採っていたよね」
「うん。山菜や野草には薬用効果のあるものもあって、うちに帰って薬にしたり料理したりしてみようかと思ったの。魔女先生に教えてもらったように」
あたしがそう言うと、ここみちゃんは「へえ、すごいね、しずくちゃん!」と言い、コタくんは「おれ、山菜、食べてみたい」と言った。
「え、でもさっき、ごはん食べたよね?」
あたしたちは夕ごはんを済ませて、旅館に行ったのだ。
「でも、お腹減った……! なあ、ひびき?」
「うん、僕もお腹空いたよ」
なるほど、ハルメアで長く過ごして向こうに戻ってもあまり時間が経っていなくてラッキーだなって思っていたけれど、こんな不具合があるとは!
ああでも、よく考えたら、ハルメアに来たとき、いつもお城で何か食べていた。
「何か作ってもいいけど、山菜しかないよ」
あたしがそう言うと、くろが「ここはハルメアだよ、しずく。前に来たときもシチューがあったでしょ? 必要なものがキッチンにあるはずだよ」と言った。
あたしがキッチンに行くと、土鍋もあったしお米もあった。塩や醤油などの調味料もあった。
「じゃあ、簡単に山菜の炊き込みごはんでいいかな?」
みんながいいよー! というので、山菜の炊き込みごはんを作ることにした。
ここみちゃんが「わたしもいっしょに作りたい! 山菜や薬草のことも知りたいから、しずくちゃん、教えてくれる?」と言ったので、いっしょに作る。
「あ! もち米もある! もち米も混ぜよう」
「もち米はもちもちしておいしいよね!」
「そうなの」
まずはお米を洗って水気を切っておく。
それから、山菜と野草の中から、炊き込みご飯に向いているものを選んできれいに洗う。
土鍋にお米を入れ昆布を敷いて、水と調味料を入れる。そして、その上に山菜と野草を刻んだものをたっぷり入れる。
「いっぱいだね」
「でもね、炊くと少なくなっちゃうんだよ」
「へえ」
ごはんを炊いている間、あたしはここみちゃんに少しだけ、摘んできた山菜や野草の話をした。
「ツユクサって知っている?」
「知っているよ、青いかわいい花が咲くやつでしょう?」
「そう! ツユクサ、食べられるんだよ。若芽を天ぷらにしてもいいし、バター炒めにしてもいいの」
「知らなかった!」
「でね、若芽以外の部分はね、薬になるの。うがい薬にもなるし、湿疹にも効くんだよ」
「わたし、湿疹が出るから使ってみたいなあ。肌が弱くて」
「じゃあ、作ったらあげるよ」
「ありがとう!」
「それからこれ、ユキノシタ」
「これも見たことある!」
「でしょう? 茹でで胡麻和えにしてもいいし、天ぷらにしてもいいんだよ。それからね、これ、かぶれややけどの薬にもなるんだ」
「すごいね。実は身近にあるものが薬になるんだね」
「そうなの! ただ、自由に採取出来ないから、ハルメアで採っているんだけど。あたしたちがよく見ているツバキも薬になるんだよ」
「学校にある、あの赤い花の?」
「そう! あの葉っぱね、軽い切り傷には止血に使えるの。それから、乾燥したつぼみをお茶にして飲むと、元気になるみたい」
「あ、それ、飲んでみたい!」
ツバキの花の時期は終わってしまったので、あたしは今度ツバキのつぼみを見つけたらこっそり摘んで(!)、乾燥させてお茶を作ろうと、ここみちゃんと約束をした。
学校のツバキの花のつぼみを採るというのは、何となくないしょでやりたいことだったので、ここみちゃんとくすくすと笑い合った。
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