3.修学旅行中にもちょっとハルメアへ

第39話

 旅館に移動する前に、くろは「じゃあ、ボクは別のところに泊まっているから」とみんなに言った。


「ええ! くろくん、明日もいっしょに回りたい」

「明日も来てくれるでしょ?」

「明日もおいしいもの、いっしょに食べようよ!」

 などとみんなに言われ、「じゃあ、明日も来るね!」と笑顔で言って、くろは女の子たちの黄色い歓声を一身に受けていた。


 くろ……。

 あたしは複雑な気持ちでその様子を見ていた。


 旅館のロビーに入ったところで、背中のリュックがごそごそしたので、隅に行って、リュックをこっそり開けて中を見た。すると猫の姿になったくろがいて、にゃあと言った。

 いつの間に?


「ねえ、しずく。今からまた旅館で自由時間でしょ?」

「よく知ってるね」

「みんなに教えてもらったんだ!」

 あたしは思わず笑ってしまった。

「どうしたの?」

 ここみちゃんが来て、あたしのリュックを覗き込んだ。

「猫!」

「しーっ」

「しずくちゃん、猫連れて来ちゃったの?」

「ああうん、連れて来たというか、勝手について来ちゃったというか」


 ロビーの隅でリュックを覗き込んで話していると、コタくんとひびきくんも来て、「自由時間どうする?」と言った。

 そしてあたしのリュックの中を見て、「猫っ!」とひびきくんは言い、「げっ!」とコタくんは言った。

 くろは猫の姿でにっこり笑うと、「ねえ、みんなでハルメアに行こうよ!」と言った。


 ここみちゃんとひびきくんが「しゃべった⁉」と言うのと、あたしの服の下あったスター・ルビーの指輪が、ふわっと出て来て光を吸収して星状の輝きを示し、眩しく光るのと同時だった。



「ふわあ、眩しかった……ここは?」

 ひびきくんがそう言って、辺りを見回した。

「……きれいな森……! お花がたくさん咲いている!」

 ここみちゃんはそう言って辺りを見渡し、猫のくろを見つけて、「あ、しずくちゃんの猫?」と言った。

 ひびきくんとここみちゃんに見つめられてくろは、「へへへ」と笑うと、くるんと一回転して、人型になった。


「え! しずくちゃんの親戚の!」

「さっきの!」

 驚くここみちゃんとひびきくんの顔を見てにっこり笑い、くろは「ボク、獣人なんだよ!」と言った。

「あ! 猫耳としっぽがあるー! 触っていい?」

 ここみちゃんが興奮したように言った。

「いいよ!」

「わあ! もふもふ!」

 ここみちゃんは嬉しそうにもふもふした。

「夢みたい! お話の中のことが現実になってる!」

「で、ここはどこ?」

 ひびきくんの言葉にくろは「ハルメアだよ!」と嬉しそうに応えた。


「ハルメア? ――虎太朗としずくちゃんは、初めてじゃないね?」

 ひびきくんはそう言って、あたしとコタくんを見た。

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