2.修学旅行にもやっぱりついて来ちゃった!

第37話

 修学旅行はお座敷列車に乗って行く。


 あたしはここみちゃんと隣どうして座った。

「お菓子、何食べる?」

 あたしはお菓子をここみちゃんといっしょに買いに行ったので、嬉しくてそう言った。

 そして、リュックを開けようと思ったら、なんかごそごそするので中を見ると、なんとくろがいて、あたしを見るとにっこりした。

「……!」

 思わず、「くろ!」と叫びそうになるのを、あたしは堪えて、「ここみちゃん、あたし、トイレに行って来る!」と言ってトイレに行った。……リュック持ったままだったから、ちょっと不審だったと思う。


 お座敷列車のトイレに入り、リュックを開けた。

 するとくろがぴょんと飛び出してきて「しずく!」と元気よく言った。

「くろ……ついて来ちゃったの?」

「うん! だってボクはしずくの使い魔だから!」

「修学旅行だよ?」

「でもほら、遠足もいっしょに行ったよね?」

 くろはそう言って、胸を張った。


「遠足と修学旅行は違う気がするんだけど……でも、ついて来ちゃったのは仕方がないよね」

「えへへ! ボクはいつでもしずくといっしょだよ!」

「うん、分かった! でも、くろ電車の中では静かにしていてね? だいじょうぶ?」

「だいじょうぶだよ~。ボク、こんなふうにお出かけするの、初めて!」

 くろは踊り出しそうな感じで言ったので、あたしは少し不安になった。

「ともかく、少し長いけど……おとなしく出来る?」

「もちろんだよ!」

「じゃあ、またリュックの中にいてね。少し窮屈だけど」

「うん!」


 くろが入ったリュックを閉めて、あたしがトイレから出ると、コタくんに会った。

「コタくんもトイレ?」

「あ、いや、しずくがこっちに行くのが見えたから。何かあったかな、と思って」

「……あのね、くろがリュックの中にいたの!」

「はあ?」

「今回は旅行だから、お留守番していてねって言ったんだけどなあ」

「あいつ、分かった! とか言ってなかった?」

「言ってた。でもまあついて来ちゃったものは仕方がないよね」

 コタくんは苦虫を潰したような顔をした。



 幸い電車の中でくろはおとなしくしていて、あたしはほっとした。

 でも、現地に着いて、グループ行動で散策しているとき、いきなりくろの声が後ろから聞こえた。

「あ、そのソフトクリーム、ボクも食べたい!」

 え? と思って振り返ると、なんと、人型のくろがいた!

「く、くろ! なんでっ⁉」

「だって、修学旅行は遠足と違うからさ」

 と言ってくろはにこにこ笑った。


 黒いくせ毛に、いたずらっぽい金色の瞳。ああ、それに猫耳もあるし、しっぽもある!

 どうしよう‼


「しずくちゃん、その人……お友だち?」

 隣にいたあたしが立ち止まったので、ここみちゃんが振り返って不思議そうに言った。

「あ、えーと」

 何て言おう? それに、猫耳としっぽ、どうしよう⁉

「ボク、クロード・ルネって言います。しずくの親戚です」

 え? 親戚? くろは何を言っているんだろう?

「しずくちゃん、外国人の親戚がいたんだ!」

 あたしがどきどきしていると、ここみちゃんが興奮したように言った。


 あれ? 猫耳としっぽ、見えていないのかな?

「そうそう、見えていないんだよ。魔法がかかっているからね」

 くろがあたしの耳元でそっとつぶやいた。

 そうか、猫耳としっぽが見えないのなら、いいのかな?

 すると、次はコタくんの大きな声が聞こえてきた。

「あーーーーー! お前っ。なんでいるんだよっ」

 くろはコタくんを見ると、にやにや笑った。


 ……ああ、なんか、波乱の予感?

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