第36話
「しずく。明日、修学旅行のグループを決める日だけど、その」
コタくんは学校から帰るとき、そんなふうに話しかけてきてくれた。
「コタくん、心配してくれてありがとう! あのね、あたしね、九月の新学期が始まってから、ここみちゃんと仲良くなったの」
「鈴村?」
「そう!」
「二人ともよく図書室に行っていたもんな」
「そうなの。あのね、好きな本がいっしょだったのよ! それで仲良くなったの」
「よかった!」
「うん。この間ね、ここみちゃんに聞いてみたの。修学旅行のグループ、いっしょになってくれるって。そうしたら、いいよって言ってくれて」
「おお!」
「それでね、コタくんとひびきくんを入れて、四人グループになってもいい? って聞いたら、いいよって」
「ああ、よかった。修学旅行、楽しみだね!」
「うん。すごく楽しみ!」
次の日のグループ分け。
あたしたちはすごく早くグループを作れて、なんだか自分でもびっくりだった。約束していたことではあったけど、でも、あたしはグループ分けのときはいつも悩んで困って、どこに入れてもらえるんだろう? どこにも入れてもらえなかったらどうしようと悩んでいたので、こんなに早く決まって、とても嬉しかった。
グループ分けの最中、りこちゃんと目が合った。
睨まれた気がしたけれど、気にしないことにした。
こういうことで、あまり落ち込んだりしないようにしたいと思った。
「あのさ、おれのこと、
グループ決めが早く終わり、役割分担もしたあたしたちはずっとおしゃべりしていた。そのとき、コタくんがふいにそう言った。そうだ、あたしたちの中で、ここみちゃんだけ、コタくんのこと、野嵜くんって呼んでる。
「あ、じゃあ、
ここみちゃんがそんなふうに言ったので、そう言えばあたしもひびきくんには白石さんって呼ばれていることに気がついて「あたしも名前がいい!」と言った。
そうして、あたしたちは互いを下の名前で呼び合うことにした。
下の名前で呼ぶ方が、仲良しになれる気がして、あたしたちは名前を呼ぶ練習をしながら、身体中ぽかぽかしたもので満たされていた。
グループ別行動のとき、どこを回るか、とか、何を食べたい、とか、そういういろんな話もした。みんな行きたいところや食べたいものがたくさんあって、どれにしようか楽しく悩んだ。
修学旅行がとても楽しみになって、すごくわくわくした。学校行事はいつも気が重かったけれど、こんなに楽しいんだ! と思って、ここみちゃんにそう言ってみたら、「わたしもそう思う」って言ってもらえて、なんだかいっそう嬉しかった。
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