第34話
おばあちゃんは「自分が大切だな、と感じるものを大切にするといいよ。それから、しずくのことを大切に思ってくれている人のことをちゃんと分かるようにしなさい」と言った。
それは大魔女ルチルが言った「いつでもそのときの自分の気持ちを大切にしなさい。そして、自分を大切に思ってくれる人のことも、大切にするといい」と同じことなのだ。
あたしはおばあちゃんと話しながら、くみちゃんのことを考えていた。
LINEの返事もなかなかないし、学校でもクラスが違うからほとんど会えない。放課後遊ぶのはもちろん出来ない。夏休みだって、やっぱり遊べない。だって、くみちゃんはいま、中学受験の勉強を頑張っているから。
あたし、自分のことばかりで、くみちゃんのことをあまり思いやれていなかった。
きっとくみちゃんはいま、すごく頑張っていて、そしてすごく大変なんだ。
LINEの返事をくれない、と思っていたけれど、そうじゃなくて、この間、電話してくれたことをこそ、大切にするべきなんだ。
あたしはくみちゃんに手紙を書いて届けることにした。LINEじゃなくて。
それから、少し遅れちゃったけど、お誕生日プレゼントもつけて、くみちゃんちの家のポストに入れておこうと思っている。くみちゃんの誕生日は八月八日だった。プレゼントはすごく悩んだけれど、自分で作った「疲れがとれるハーブティ」とハンカチにした。ハンカチにしたのは、コタくんからハンカチをもらって嬉しかったからだ。かわいい猫が描かれている、やわらかいガーゼのハンカチにした。ハーブティは、勉強の疲れを癒してくれたらいいなと思って。
くみちゃんは、ずっと友だちでいてねって言っていた。
連絡がなかなかとれなくても、くみちゃんのその言葉を信じたいと思った。
なかなか会えなくても、大切な友だち。
夏休み明けの新学期。
あたしはもう、りこちゃんやねねちゃんといっしょにいるのを止める。
一人でもだいじょうぶ。
ううん、一人じゃない。
くみちゃんは離れていても友だちだよって言ってくれた。くろはいつもそばにいてくれる。ハルメアに行けば、アレク王子もいるし魔女先生もいる。それからおばあちゃんも見守っていてくれる。
それに、コタくんがいてくれる。
コタくんは小さいころからずっと、あたしのそばにいてくれた。
りこちゃんやねねちゃんと友だちにならなくても、あたしにはちゃんと友だちがいるんだ。
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