八月の章 夏休みの大事件!

1.指輪がなくなった!

第27話

 スター・ルビーの指輪とアクアマリン・キャッツアイのペンダントは、あたしの宝物となった。特に、ハルメアとあたしを繫いでくれるスター・ルビーの指輪は毎日持ち歩くようにしていた。いつでもハルメアに行けるように。


 学校がある間はネックレスにして服の中に隠れるようにして首から下げていた。

 だけど、夏休みは指にはめることにしたんだ。


「それ、指にはめるんだ」

 コタくんはちょっと眉間に皺を寄せて言った。

 あたしたちは今、井戸工房にいた。いっしょに夏休みの宿題をやったりおしゃべりしたりしていた。

「うん、夏休みだから! 学校があるときは指に出来ないし」

「……ふうん」


「あ、コタくん! ハンカチね、すごく気に入っているよ。ありがとう!」

 あたしはポケットからハンカチを出して、コタくんに見せた。コタくんがあたしの誕生日にくれたプレゼント。かわいい花の模様のガーゼハンカチだ。

「お、おお。……気に入ってくれたなら、よかった」

「うん、大好きだよ、ありがとう! ……あたし、コタくんの誕生日には何もあげなかった、ごめんね」

 コタくんの誕生日は五月五日だ。

 ちょうどそのちょっと前からりこちゃんやねねちゃんとうまく行かなくなって、あたしはそのことで頭がいっぱいだった。

「気にしなくていいよ。プレゼントは、おれがあげたくてあげたんだから」

 コタくんは耳を赤くしながら、そう言った。


「あ。ねえ、コタくん、今日はこれからサッカーあるの?」

「ある」

「そっかあ」

「どうして?」

「図書館にいっしょに行きたいなって思ったの」

「図書館?」

「うん。夏休みの宿題で、社会の人物調べがあるでしょう。あれをやろうかなって思ったの。コタくんもいっしょに出来たらいいなって思って」

「ああ、ごめん。今日は無理だ」

「分かった。じゃあ、あたし一人で行くね」

「あ、じゃあさ、途中までいっしょに行かない?」

「そうする」

 そのとき、丸まって眠っていたくろがむくりと起きて、「ボクはいつもしずくといっしょだよ! 小さくなってついていくね!」と言った。

 コタくんは嫌そうな顔でくろを見て、「ちっ」と言った。

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