3.アレク王子、ありがとう!
第23話
そもそもハルメアには魔女修業のために毎日行っていたので、あたしは魔女修業に加えて泳ぎの練習も毎日することにした。
コタくんは来られるときはいっしょに来て泳ぎを教えてくれたけど、サッカーや習いごとがあって来られないときも多かった。土日はだいたいサッカーの練習があったし。
コタくんが来られないときは、アレク王子が泳ぎを教えてくれた。アレク王子は毎回、「溺れない魔法」をかけてくれて、そのおかげで安心して練習することが出来た。
バタ足をマスターしたあと、手の練習をした。
「いち、にい、で息つぎしてもいいけど、いち、に、さん、よん、のよんで息つぎしてごらん?」
「はい!」
息つぎするたびに沈みそうになって、息つぎ難しい! って思ったけど、あたしは諦めずに練習をした。
そんなふうにして毎日練習しているうちに、息つぎも出来るようになった。息つぎが出来るようになると、泳げる距離も少しずつ長くなっていった。
「しずく、すごいね! たくさん泳げるようになったよ!」
くろがばしゃばしゃと泳ぎながらあたしのところに来て、言った。
「ねえ、くろはどうやって泳げるようになったの?」
「んー、いつの間にか?」
「ねえ、猫って、水嫌いじゃないの?」
「ボクは水遊び、大好きだよ!」
くろはそう言って、あたしにばしゃばしゃと水をかけた。
そうしてあたしたちはしばらく、水遊びを楽しんだ。
遠くで鳥の声がチチチチと響いて風が渡る緑の音も聞こえて、空は青くて水は透明で澄んでいて、なんだかとてもいい気分だった。
「アレク王子、ありがとう! 泳ぎを教えてくれて」
「虎太朗くんにもお礼を言わないとね」
「うん」
そこにくろが会話に加わり、「あんなやつにお礼言わなくてもいいんだよ!」と言い、アレク王子に「ルネ、そんなこと言うもんじゃないよ」とたしなめられていた。
「ところでさ、虎太朗くんは今度いつ来られるのかな?」
「えーと、サッカーの練習と習いごとがない日だから、明日、とか?」
「じゃあ、明日、虎太朗くんを連れておいで」
「はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます