第12話

「おい、しずく! いいのかよ。山口や木村って、お前をハブってたやつだろ?」


 休み時間に、コタくんに呼ばれて、あまり人が来ない階段脇の隅のところに連れて行かれ、そう言われた。

「うん、でも、ごめんねって」

「そのごめんね、もさ、なんでお前まで謝ってんだよ」

「だって」

「お前は何も悪くないだろ」

 コタくんは真剣な顔で言った。

「そうなんだけど」

 あたしには何の心当たりもなかったけれど、もしかして何かしたのかもしれない、と思ってしまったのだ。


「ほんとうに、遠足、いっしょのグループでいいのかよ」

「だって、もう決まっちゃったし」

「先生に言えば……」

「言わないで。今さら変えたいとか言ったら、きっと大変なことになるから」


 あたしはそのことの方が怖かった。もし、今怒らせてしまったら、また口を利いてくれなくなる。それにもし、もしも魔法が効いているのなら、このままうまくいくのかもしれない。

 あたしが黙ってしまって、コタくんの言葉も途切れたそのとき、あたしのポケットから何かがぽんっと飛び出した。


「だいじょうぶだよ、しずく! ボクがいるからねっ」


 くろがにゃ、と言いながらあたしにすり寄った。

「くろ!」

 あたしは嬉しくなって、くろを抱き上げた。わーい、もふもふ!

「おまっ、いつの間にっ。てか、何で学校に来てんだよっ!」

「だってボクはしずくの使い魔だからさ。小さくなって、しずくのポケットにずっといたんだよ」

「ありがとう、くろ!」

「当たり前だよ、しずく!」

 くろはあたしの口をぺろってなめた。


 コタくんは真っ赤になって、「お前、だから、それやめろって!」と騒いだ。

「えへへ、くろ、いてくれて嬉しいなっ」

 あたしはくろのもふもふを触っていたら、落ち込んでいた気持ちがふわっと明るくなった。

「しずくはボクが守ってあげるからねっ」

 くろはそう言って、コタくんのことを見てくすって笑った。


「あー、もう、そうじゃないんだよっ」

 コタくんは頭をがしがしってやった。

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