3.ハルメア国の王子さま

第6話

 目覚めると、辺りは明るくなっていて、コタくんはもう起きていた。くろも起きていたけれど、あたしが眠っていたから、そのままベッドになっていてくれたみたい。

「にゃん!」

 くろはひと声鳴いて、しゅうっともとのふつうのサイズに戻った。


 ログハウスを出ると、目の前にお城があった! 

 白亜の城。屋根の部分は青くて、御伽噺おとぎばなしに出て来そうなとてもきれいなお城。

「わあ、すごい……」

「にゃっ!」

 くろは、しっぽを地面にぱんっと打つと、「行くよ!」って感じでしっぽをぴんと立てて歩いた。

 あたしはコタくんとくろのあとに続いて、白亜のお城へ向かった。



 お城の周りは色とりどりの花で埋め尽くされていた。特に多かったのは、サンフラワー。花がやわらかな風に少し揺れて、まるであたしたちを歓迎してくれているみたいだった。

「きれいね」

「うん、あの、黄色い花、何? 森の中にもたくさんあったよね」

「サンフラワーだよ」

 くろがお城の門に近づく。あたしとコタくんもくろ続いて、門に近づく。すると、門は自動的に開いて、さらにお城の扉も自動的に開いて、あたしたちはお城の中に入って行った。


「ようこそ。エバーグリーンの森の国、サンフラワーの咲き誇る緑と花と魔法の国、ハルメアへ‼」

 キラキラの王子さまがそう言った。

 どう考えても、このひとは王子さま! 

 プラチナブロンドのさらさらの髪に碧眼。整った美貌。こんなきれいなひと、見たことがない。コバルトブルーのジャケットには金糸の刺繍がほどこされ、白いパンツに黒のロングブーツをはいている。どう考えても王子さまそのものだった。


「王子さま……」

 あたしは思わずそうつぶやくと、王子さまはひざまずいてあたしの手をとりキスをして、

「しずく姫、お待ちしておりました」

 と言った。

 コタくんの「あああっ」っていう声が聞こえた。

 あたしはキラキラの王子さまに「しずく姫」って言われてお姫さまみたいに扱われて、どきどきして、ことばが出て来なかった。頭がぽうっとしてしまう。


 王子さまはあたしの顔を見て、その麗しい顔でにっこりと笑った。

「私はアレクサンドル・シャリエと言います。この、ハルメア国の第一王子です。アレクと呼んでくれると嬉しい。……クロード・ルネ!」

 アレク王子が「クロード・ルネ」と呼ぶと、くろは王子さまのそばに駆け寄り、そして、くるっと一回転した。すると、なんと一瞬のうちに人型になった! あ、でも、耳としっぽがある! 

黒いくせ毛の髪にいたずらっぽい金の瞳をした、黒い猫耳としっぽを持つ男の子。すっごくかわいいの。


「くろ?」とあたしは言い、コタくんは「あーーーーー!」って叫んでた。

「うん、そう。ボクだよ、しずく。話せて嬉しい!」

 くろがあたしに抱きつこうとして、アレク王子とコタくんに止められた。

「え~~~~」とくろが言うのと、

「ルネ、レディにはやたらと抱きつくものじゃないよ」とアレク王子が言うのと、

「ちょっ! お前、人間じゃないかっ! しずくに触るなっ!」とコタくんが言うのと、同時だった。

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