第5話
あたしたちは森の中をずんずん歩いた。
ちょっと疲れてきたかな? と思ったとき、くろがあたしの腕の中からぴょんって下りて歩き、またあたしたちを振り返ってみて「にゃあ」って鳴いた。
しっぽをぴんと立てて歩く、くろのあとをあたしたちはついて行った。すると、小さなログハウスがあった。
「わ、かわいいおうち!」
くろはログハウスの前まで行き、扉の前で「にゃん」と鳴いた。
あたしとコタくんはログハウスの扉を開け、中に入った。
小さなキッチンとテーブルと椅子、それから奥にはベッドがあった。
「ここで休憩しよってこと? くろ」
「にゃん!」
窓の外を見ると、いつの間にか夕闇が迫っていた。
「お腹空いたー」
コタくんはそう言って、キッチンの方に行った。
「お! シチュウがある! パンもある! しずく、食べようよ」
「え、いいのかな?」
あたしはくろを振り向くと、くろは「だいじょうぶ、食べて」というふうにわらった。だから、安心して食べることにした。
コタくんとあたしはシチュウを食べ終わり、片付けを済ませると、急に眠くなってしまった。
「ねえ、コタくん、あたし、眠い」
「奥のベッドで寝てこいよ」
「ベッド、一つしかないね。大きいから、いっしょに寝られるよ。コタくん、いっしょに寝よう。コタくんも眠いよね?」
「や、ね、眠いけど、い、いっしょにってのは、ちょ、ちょっと」
「? 何どもってんの。よくいっしょに寝たじゃない! 小さいころはお風呂もいっしょに入ったし」
「し、し、しずくっ」
「寝よ?」
「わ、分かった。じゃ、じゃあ」
コタくんは真っ赤になりながら、あたしといっしょに奥の部屋に行こうとした――そのとき、くろがまたコタくんをひっかいた。
「い、いてっ」
「くろ?」
くろはコタくんをひっかいたあと、「にゃん!」てひと声鳴くと、ずんずん大きくなっていった。
「くろ!」
そうして、あっという間に巨大なもふもふとなって、「にゃあ」とあたしを呼んだ。
あたしはくろにぽんって抱きついた。
「きゃー、もふもふ、あったかーい! きゃん、ふかふかー! 気持ちいー! あたし、くろで寝る! コタくん、ベッド使っていいよ」
「あ、う、うん。……分かった」
コタくんはなぜかちょっと残念そうにしつつ、でもちょっと安心したような顔をして奥のベッドの部屋に行った。
あたしたちは、森の中をうんと歩いたのですごく疲れていて、すぐに眠ってしまった。
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