第2話
「しずくっ! だいじょうぶ?」
「……コタくん」
「よかった」
コタくんはほっとしたようににこっと笑った。
コタくんは同い年で家がご近所で、幼稚園からいっしょの幼なじみの男の子。
あたしは起き上がって、周りを見渡した。
「ここ、どこ?」
あたしたちは森の中にいた。
美しい緑の樹々。太陽の光がやわらかく射して、草花がほほえんでいた。鳥のさえずりが聞こえ、そこここで動物たちの気配がした。
「どこだろうな。気づいたら、ここにいたんだよ」
コタくんが差し出した手をつかんで立ち上がる。
「きれいなところ……」
あたしは森の美しさで胸がいっぱいになった。
「あっ、あれは!」
「どうしたの?」
「ローズマリー!」
「しずくのうちにもあるね」
「うん!」
「あ、ブラックベリーもある」
「へえ」
「ブラックベリーはね、お薬にもなるんだよ」
「そうなんだ」
あたしは、おばあちゃんに教えてもらった植物を見つけて嬉しくなった。
まだ他にもないかな、と思って歩き出そうとしたら、コタくんに引き戻された。
「ひとりで行くな。危ないから、手をつないでおこう」
「うん」
あたしはコタくんが差し出した手を握った。
「ねえ、コタくん。そう言えば、うちに何しに来たの?」
「用がなきゃ、会いに行っちゃいけないのかよ」
「そういうわけじゃないけど」
「……クラスの女子の話を耳にしたから、しずく、だいじょうぶかなって思って」
「あ、うん……」
あたしは急に気持ちがずんと落ち込んだ。
おばあちゃんのノートを見ていたら、「なかよし魔法のくすり」っていうのがあったんだ。さっき、あたしはそれを作っていたの。
「山口と木村がしずくのこと、ハブってるんだって?」
「……」
山口
「おれ、先生に言おうか?」
「言わないで」
「でもさ」
「……いいの、言わないで」
「ハブってくるやつなんて、ほっとけよ。他に友だち見つけろよ」
「人気者のコタくんには分らないよ」
「……おれがいるだろ?」
コタくんはつないだ手をぎゅってした。
「……でも、コタくんは男の子だから」
「そんなの!」
コタくんがそう言ったとき、木陰から何かが飛び出して、あたしはびっくりした。あんまりびっくりしたので、あたし、コタくんにしがみついた。ぎゅうって。
「し、しずくっ」
コタくんはなぜか真っ赤になって慌ててた。
あたしは慌てるコタくんに、さらにぎゅっとしがみついていた。
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