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お客様に・・・的場様に丁重にお断りをした後、19時に的場様のお宅を出た。
悲しそうな顔をしている的場様が何かを言いたそうにしているのは私でも分かったけれど、それにお辞儀だけをして綺麗なマンションを後にした。
「真理姉、お帰り~!」
妹の理子(りこ)がカメラを片手に玄関まで出迎えに来てくれた。
「ただいま。
遅くなってごめんね、20時・・・。
今からご飯作るね。」
「うん、ありがとう。
真理姉のご飯は本当に美味しい!
今日のお弁当も可愛かった~!!」
カメラを片手にそんな嬉しいことを言ってくれ、自然と笑顔になった。
前髪の隙間から理子に笑い掛けると、理子は可愛い素顔で今日も笑っている。
部屋で部屋着に着替える。
2月に入り本格的に寒くなってきた。
いつも通り綿の半袖の肌着を着て、その上からモコモコの少しくすんだピンク色の部屋着を。
それから同じ色のモコモコの半ズボン、同じブランドの白いモコモコの太ももまでの靴下を履いた。
そして、腹巻きをその中に・・・。
低い位置でお団子にしていた髪の毛を一旦ほどき、そこから頭の上の方でちょんまげに結び直した。
長い前髪は頭の上でピンでとめ・・・
「よし・・・、やりますか。」
部屋にある全身鏡で可愛くない自分の顔と可愛い部屋着を着ている姿を見てから、部屋の扉をゆっくりと開けた。
「え!?
和(かず)君も真理姉のこと覚えてたんだ!?」
私が料理をしている間も、理子はカメラを片手にすぐ隣に立っている。
そして驚いた声を上げていた・・・。
「うん、覚えてた・・・。
嫌だな・・・忘れてて欲しかった・・・。
2週間経っても何も言わないから、てっきり私のことなんて、忘れてると思ってたよ・・・。」
「でも小学校の頃は仲良かったんでしょ?」
「私はそう、思ってたけど・・・。
でも、私の勘違いなんだと思う・・・。
私コミュ障だし・・・。
だからあの人が私のことを・・・好きでいてくれてるなんて、思い込んでて・・・。
告白なんてことを、してしまい・・・。
恥ずかしくて・・・恥ずかしくて・・・私は二度と会いたくなかった・・・。」
「和君は真理姉と毎日会いたいって言ってきたんでしょ?
向こうは告白が嫌だったわけじゃないって!!
卒業式に告白した時だって、“ありがとう”って言ってくれたんでしょ?」
カボチャの煮物を料理する鍋に、最後にオリゴ糖を入れた。
そして、大きく項垂れる・・・。
「そんなの・・・あの人は、みんなにそう返事、してた・・・。
沢山の可愛い女の子から、告白されてたから・・・。」
とてもモテる人で・・・。
あの人は小学生の頃からとてもモテる人で・・・。
「でも大人になってから再会出来たんだし!!
小学校6年生の男子なんてそんなものじゃない?
恋愛より食でしょ、食!!」
理子のその言葉には自然と笑顔になって、大きなフライパンにお肉を沢山入れていく。
「今日は牛丼・・・。」
「我が家の男どもが喜びますね!!」
「理子は、白米食べる・・・?
私は少しだけよそって、そこに絹ごし豆腐と牛丼の具を混ぜて少し味付け加えて、しめじと舞茸も加えてから少しチーズをのせてレンジでチン・・・。」
「え~!!美味しそう~!!
私もそれ食べてみたい!!」
「あとは具沢山の、お味噌汁・・・。」
「今日も楽しみ~!!
でも・・・また牛丼だね!?
和君と再会してから牛丼よく作るようになったよね!!」
理子にまた指摘されてしまい、それには恥ずかしくてフライパンから顔を上げられなかった・・・。
「うん・・・あの人との思い出の、牛丼・・・。」
「某牛丼チェーン店の牛丼屋ですね!
真理姉はあの味を再現出来るから我が家の男どもは大喜び!!」
理子がそう言いながら可愛い素顔で笑っていた。
「破壊力抜群~!!!」
今日も理子がそう言いながら私の作ったご飯を食べていく。
ダイニングテーブルに置かれたカメラの隣で、私はいつも通りゆっくりとよく噛んで食べた。
「真理姉のカボチャの煮物、私大好き~!!
明日はトーストに挟んで食べちゃおうかな!!」
「それは・・・絶対に美味しい・・・!!」
想像してしまい私も食べたくなってしまう・・・。
「明日は真理姉も朝ご飯パンにしない?」
理子が可愛い素顔で聞いてきて、私はスマホを確認した。
「パンは・・・2週間ぶりか・・・。
うん、私もパンにする・・・。」
「やった~!!楽しみ~!!」
「明日の授業、何限から・・・?」
「明日は2限から!!
4限まで終わってからバイトがあるから帰り遅くなっちゃうんだよね~。
今日の夜と明日の朝は真理姉との時間を過ごしたい!!」
大学生の理子がそう言って、可愛い可愛い素顔で私のことを見てきた・・・。
そして、言った・・・。
「大好きな、可愛くて美味しい私の真理姉!!」
そう、言った・・・。
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