【会話のみ】楽しいヒモ生活

下東 良雄

楽しいヒモ生活


「ただいまー」


「お帰り、ご飯まだ?」


「ちょっといい加減にしてよ……仕事で疲れてるんだから」


「なんかいっつも疲れてるよな」


「まぁ、でもキミの顔見ると疲れなんか吹っ飛んじゃう!」


「そうだろ? ハニーはいつだってオレのトリコさ」


「ふふふっ、ちょっと待っててね! すぐに用意するから」


「疲れてるのに悪いな」


「はい、はい、部屋で待っててちょうだいね!」


「はいよ、邪魔しちゃ悪いからな」




「どう美味しい?」


「あぁ、とっても美味しいよ」


「うん、うん、良かった!」


「ハニー、今夜もそれしか食べないのか?」


「もうダイエットやめようかな……」


「別に太ってないじゃん」


「なんか身体の調子も悪いし……」


「ちゃんと食べなきゃダメだ」


「食べて、その分動くか!」


「それがいいな!」


「夜、寝る前に軽くウォーキングでもしようかな?」


「ひとりじゃ危ないからな、オレも付き合うよ」


「キミと夜の散歩を楽しみますか!」


「それがいいね、健康的なハニーが好きだよ」


「でーも! それは明日からってことで!」


「おいおい、思いついたら即実行の方がいいんじゃないのかい?」


「今日はしっかり食べて、ぐったりする!」


「あのなぁ……またダイエットが必要になっちまうぞ……?」


「キミと一緒にゴロゴロしたい!」


「バ、バカ、いきなり抱きついてくるなって……」


「ふふ〜ん♪」


「まぁ、いいか……こんな生活ができるのもハニーのおかげだ」


「それ! コチョ コチョ コチョ コチョ」


「わわっ! くすぐったいって! ダメだって!」


「あははは、コチョ コチョ コチョ コチョ」


「こ、これ以上は……! ちょ、ちょっとマズいってば……!」


「あっ……何かゴメン……」


「オ、オレの方こそ……敏感なもんで……」


「ま、まぁ、キミも男だってコトだね! うん!」


「あー……変な気を使わせてスマン……」




「ねぇ、一緒にお風呂入ろっか!」


「そうだな、たまには一緒に入りたいな」


「よし! じゃあバスルームへレッツゴー!」


「OK!」




「お・ま・た・せ!」


「おぉ、いつも思うけどハニーは着痩せするんだな」


「あ〜ら、セクシーな私に視線が釘付けって感じ?」


「はい、はい……」


「なによ! そんな興味なさそうに!」


「興味ないなんてことはないよ」


「もう見飽きちゃったかな……?」


「そんなことないさ」


「ふふふっ、なーんてね」


「ハニーはいつ見たって、新しい魅力が発見できるもの」


「な、なによ、今度はジロジロ見て……」


「ハニーは本当にキレイだなって……顔赤いよ?」


「ほ、ほら、身体洗ってあげるから!」


「さんきゅ」




「はぁ〜、さっぱりした!」


「オレもさっぱりしたよ、ありがとな」


「キミも気持ち良さそうだったね」


「ハニーのおかげだよ」


「じゃあ、私はプシュッと一杯やっちゃおうかな!」


「おいおい、飲みすぎるなよ」


「キミはお酒飲めないからねぇ……」


「スマン……」


「まぁ、ちょっとだけ私に付き合ってよ! ね?」


「もちろん、いくらでも付き合うさ」


「キンキンに冷えた缶ビーーーール!」


「ハニー、大好きだよな」


「まさに神の飲み物……んぐ、んぐ、んぐ……っぷはぁー! 美味い!」


「幸せそうな顔しちゃって……」


「たまらん! ……ぐぇっぷ」


「おい!」


「思いっきりゲップしちゃった♪」


「オレだから許してやれるんだからな!」


「ゴメン、ゴメン、女性にあるまじき行動だったね」


「まったく……」


「げっぷ……」


「おーーいっ!」


「たはははは、まぁ、まぁ、許してちょんまげ!」


「もう酔っ払ったのか……」


「ほらぁ、こっち来い!」


「わわっ! ちょっと待てって!」


「むっふっふ〜♪」


「弱いくせに飲むから……外で大丈夫なのかな……」


「ねぇ、聞いて」


「どうした」


「課長がさぁ、私を目の敵にしてくんのぉ!」


「またあの課長かよ」


「私ばっかりさぁ、面倒な仕事押し付けてきてさぁ」


「最低だな」


「多分、私が振ったからだ……」


「振った?」


「アイツ、事あるごとに飲みに行こう、飲みに行こうってさぁ」


「マジかよ……」


「はっきり『迷惑です』って言ってやったわよ!」


「おっ、よく言った!」


「『次誘ってきたらセクハラで訴え出ますからね』って!」


「そうだな、立場を利用したセクハラだな」


「そしたら、私を目の敵にしだしてさ……」


「さ、最低最悪の上司だな……」


「女子社員みんなから嫌われてんのに気付いてないのかな……」


「そりゃ嫌うよな……」


「だから、ストレス溜まっちゃって……ついにキミにも甘えちゃって……」


「オレで良ければ、どんどん甘えてよ」


「ホント……ゴメンね……」


「謝る必要なんてひとつもない」


「いつもありがと……」


「それはオレのセリフだ。ハニー、毎日本当にお疲れ様」


「私、ガンバル……!」


「ハニーは偉いな」


「あんなクソ課長なんかに負けてたまるか!」


「そうだ!  ガンバレ!……でも、絶対に無理はすんなよ」


「ふふふっ、いつだってキミは私を優しい眼差しで見つめてくれる」


「当たり前だ。オレはハニーが好きだからな」


「も〜! 大好き! 大好き!」


「いくらでも抱き締めてくれ……それでハニーが癒やされるなら……」




「そろそろ……寝よっか……?」


「そうだな、週末とは言え、もうだいぶ深い時間だ」


「今夜も……一緒に寝てくれる……?」


「当然だろ、ハニー」


「ほら、来て……」


「ハニーの暖かい体温を感じるよ……」


「ふふっ、あったかい……」


「オレもだよ。ハニーの愛を感じるよ。……」


「おやすみ、


「ワンッ」


「あっ、そうそう、来週年一の予防注射だからね」


「ワ、ワフン……」


「あっ! こら! 逃げるな!」


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