第42話 激突! 召喚合戦
『第一試合! 夜の召喚師テナテナリ対、月の女王マクラギミユ、始め!』
魔声器を握るアナウンス嬢の美しい声が闘技場に響いた。
「エクシーレッ、ギガントード!」
〝ドッズンッ!〟
テナテナリは杖を振うと、巨大な蛙を召喚した。
〝ゲゴゴゴゴッ、ゲゴッ、ゲゴゴッ!〟
『おおーっと! これはいきなりの大物っ、丸呑みトードです!』
「急・発・進っ!」
〝ドガンッッ!〟
すると、ミユが召喚したダンプカーがギガントードを引き潰した。
『え、えっと、今のは何でしょうかっ?! 鉄の塊が蛙を挽肉にしました!』
「やりますねっ、それでは!」
テナテナリは魔力を高めて杖に注ぎ込んだ。
「エクシーレッ、山脈ムカデ!」
〝ズドドドドンッ、ズズズズンッ、ズドドドドッ!〟
『こーれは大きい! しかも長い長い! 山脈ムカデが現れました!』
「アクセル全開! スピード違反!」
速度をあげたダンプカーが突進する。
〝ドガガーーーーンッッッ!!〟
しかし、鉄の塊は巨大なムカデにオモチャのようにはねられてしまった。
「マクラギさん! 降参するなら今ですよっ」
「まだまだっ!」
ミユは指差し呼称で左右を確認した。
「安全よしっ!」
〝シュオオオーーーーーーーーー〟
遠くに風を切り裂く音が聞こえる。
『あっ、あれはっ?! 鉄のムカデが現れたーーーーっっ!』
〝シュオオオオオオオッ! ビシュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!〟
新幹線が、時速320キロで山脈ムカデのレールを走り抜けた。
〝ガガガンッガガガンッガガンッッガンガンガンガンガンッッッ〟
山脈ムカデは新幹線が通過する衝撃に耐えられず、粉々になってしまった。
「なんのっ! エクシーレッ、メタルゴーレム!」
〝ゴゴンッッ!!〟
大きな鉄の人形が地面を揺らした。
「粉砕なさい!」
〝ドドドドッッ! ドドドンッッッ!〟
メタルゴーレムの腕が新幹線を脱線させた。
「やるわねおばちゃん! それじゃあこっちも遠慮なく、全速前進っ!」
〝ズゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!〟
1,500馬力の轟音が闘技場に鳴り響く。
「撃てーーーっっっ!」
〝ドッパーーーーンッッッッ!!!〟
レオパルト2主力戦車の主砲が火を吹くと、メタルゴーレムの体はバラバラに飛び散ってしまった。
『わっ、我々は一体何を見せられているのでしょうかっ!? 第一試合からいきなり壮絶な召喚合戦になっています!』
満員の客席は総立ちになり、拍手と歓声が沸き起こった。
「お、おいユリカ……ミユって一体何者なんだ……」
ブランは目の前の光景に圧倒された。
「えへへっ、私の妹よっ」
「ミユさーーーんっ!! がんばれーっっっ!!!」
「おいギリー……ミユにいくら賭けたんだ……」
「お館様、もうこれでミユさんの優勝は決まったのではありませんか」
「まだ第一試合なんだがな……」
「まだまだっ、お師様の力はこんなものじゃありませんよっ」
〝キュラキュラキュラキュラッ〟
レオパルト2はゆっくり方向転換をすると、主砲をテナテナリに向けた。
「おばちゃーん! 降参するなら今のうちだよーっ」
ミユが叫ぶと、テナテナリはにっこり笑った。
「マクシムエクシーレッ! レッドドラゴン!」
「ギュアッアアッアアーーーーーーーーーンッッ!!!!!」
翼を広げた真っ赤なドラゴンが空に現れた。
〝ドドドーーーーーーンッッッ!!!!!〟
レッドドラゴンは闘技場に舞い降りると、戦車を踏み潰し炎で焼き払った。
「さあマクラギさんっ! よくお考えなさい!」
燃える鉄の塊を蹴散らしたレッドドラゴンは、大きな翼を羽ばたかせると空高く登った。いくら召喚された魔物とはいえ、最恐の竜が闘技場を闊歩するとパニックになりかねないのだ。
『さすがは夜の召喚師テナテナリですっ! まさかのレッドドラゴンが我々の頭上を飛んでいます!』
「これでお師様の勝ちですねっ、レッドドラゴンですよっ」
「さあっ、どうするのですっ!」
「ムムムッ……」
ミユは空を見上げると、意識を集中させた。
「ミユーっ! 防御シールド張りなさいよーっ!」
ミユは目を閉じてささやいた。
「ホットスクランブル、ホットスクランブル、直ちに発進せよ」
「ギャオオォォーーーンンッッッ」
悠然と空を舞うレッドドラゴンが何かを見つけた。
〝ゴオオッッオオオオーーーーーーーッッッ〟
爆音が近づいてくる。
「スクートマ!」
ミユは頭の上に光のシールドを広げた。
〝ゴオオオオオオーーーーーッッ〟
それはアフターバーナーを吹かし、マッハ2.25でやって来た。
〝ゴオオオオオォォォオオオオオオオオオーーーーーッッッッ〟
アメリカ空軍が誇る制空戦闘機、F22ラプターである。
「ギャアアァァアアァオオオオオッッッーーーッッッ」
〝ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ〟
音速を超える衝撃波がレッドドラゴンの咆哮を切り裂いた。そして、ミサイルを満載したラプターはそのまま目標に突撃したのだった。
〝ズドドドッッッゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオーーーーーッッッッッ!!!〟
空が爆発した。飛び散る炎は静かに降り、雪のように跡形もなく消えていく。
アナウンス嬢は魔声器を握ったまま言葉を失い、観客は呆然と空を眺めるのだった。
〔第42話 激突! 召喚合戦 終〕
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