第20話 夕暮れの街

 ミユはアルバイトを探す手を止めると、スマホをポケットに入れた。夢でも見ているような気分だったが、確かに左手の小指には白い宝石が輝いている。

「これ売ったらいくらになるんだろう? お姉ちゃん買ってくれないかな?」

 しかしそのとき、信号を無視したトラックが猛スピードで迫っていることに、ミユは気づかなかった。

〝ドガンッ!〟

 激しい音とともに空を舞うミユ。

〝ダダンッ!〟

 落下したミユの体は、硬いアスファルトに叩きつけられてしまった。

 街行く人々の悲鳴、騒然とする交差点。

 蛇行したトラックは街路樹にぶつかって止まった。

 だがしかし、辺りは一瞬で静まり返った。

「あーびっくりした……」

 ミユは平然と立ち上がると、傷ひとつ無い制服を見てにっこりと笑った。

「よしっ、カワイイッ!」

 夕陽を背にしたミユは、意気揚々と姉の住むアパートに走り出すのだった。


                      〔第20話 夕暮れの街 終〕 


                      第一部 ミユと荊の魔女 完

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