第23話 幕間~その頃のクーデルカ王国②~

【Side クーデルカ王国】


「あそこはフリットが急死してから今の校長……、フリスク・ワルジールに変わったそうだが、そこから連絡がないと申すか?」

「ええ、定期連絡の日になってもワルジールだけは来なかったので、手紙で何度も警告しましたがダメでしたし、水晶玉による魔法通話で警告をしようにも遮断されてまして……」

「だから調査の為にワルジールにも一部隊を貸して欲しいと」

「はい」


 国王が表情を歪ませた理由は、これもまた定期連絡をしない施設があったから。

 その施設は【ワルジール魔法学校】であり、フリット校長が謎の急死して、その弟であるフリスク・ワルジールが現在校長になっている。

 だが、フリスクが校長になってから魔法学校を纏める【魔法学校庁】の大臣への定期連絡が途絶えたと報告があり、ロラン王子が手紙で警告書を何度も送ったが、返事すらなかった。

 その上、水晶玉による魔力通話での警告をしようにも向こう側から断っているため、最終手段を行使することにしたのだ。


「なるほどな。 事情は分かった。 だが、一部隊を使っての捜査は少しだけ待ってみようぞ」

「何故です?」


 ワルジール魔法学校にまつわる事情を聞いた国王は、理解を示したが一部隊の派遣は少し待った方がいいと言った。

 ロラン王子は納得がいかずに何故と言うが、国王は笑みを浮かべてこう言った。


「実は冬に入りそうになる時期……、およそ1ヶ月後には我が王族主催の魔法学校別対抗のバトルフェスタ、その後期大会が行われるからだ」

「確かにそうですね。 でも、それと何か関係が?」

「クレスが設立した【エトワール魔法学校】では、フリスクに変わった後のワルジール魔法学校のやり方の犠牲になった子達を受け入れておるのだ」

「そういえば、今年の後期にその魔法学校も出るのでしたね」


 その理由として、約1か月後。

 もうすぐ冬に差し掛かろうとしている時期に、クーデルカ王国主催のバトルフェスタの後期大会が行われるからだ。

 そこには当然ながら、ワルジール魔法学校も参戦している。

 そして、フリスク一派の被害になった生徒たちを受け入れているという賢者クレスが設立したエトワール魔法学校もこの後期から参戦するのだ。


「そのフリスクに変わった後で迫害された生徒の中には、勇者セイルと聖魔女イリスの間に生まれた娘もいたようだ」

「何ですって!? 何故、その二人の娘さんも!?」


 その被害に遭った生徒の中に、セイルとイリスの娘のアリスもいたという国王の話にロラン王子が驚く。

 同時に、二人の娘が何故フリスク一派の被害に遭うのかと疑問が湧いた。


「理由は初期の魔力が低いからだそうだ。 初期の魔力が低いのはイリス譲りなのだろうが、フリットが校長だった時代は努力をしていたから気に入られたのだ」

「おかしいですね……。 必死で努力をしたら少しずつではありますが魔力も高くなっていくし、強くなるはずでは?」

「【制約結界】を仕込んでいたんだろう。 今の校長であるフリスクは、初期魔力で優劣を決めるべきなどと言っておったからな」


 アリスの迫害の理由を聞き、表情を歪めるロラン王子。

 彼女の初期魔力の低さは、母親のイリス譲りだそうだが、努力をすれば魔力は高くなり、強くなっていく。

 アリスも努力して魔力を高めたので、フリット校長に気に入られたのだ。

 しかし、フリスクの思想は初期魔力による優劣を決める事を思想としており、努力は無意味と主張していた。。


「それ故に他の生徒とは違って心身ともに酷いいじめを受けたそうだ。 お前が別件で居ない時にイリスが我らを経由してクレームを入れても聞く耳持たずに証拠を隠滅したそうだ」

「最悪ですね。 隠滅とか」

「定期報告をしないのも我らと敵対するという意思じゃろう。 最近きな臭い報告がセイルからあったそうだしな」

「何をです?」


 そのために、アリスは強制失禁を含めたいじめをフリスク一派から受けたのだ。

 ロラン王子が別件で居ない時に、イリスが国王を経由してクレームを入れても向こう側は聞く耳もたなかった。

 それを聞いたロラン王子の表情はさらに歪む。


「そのフリスクのスポンサーが、絶縁しつつ【深淵アビスの地】へと送ったはずのブラッド・クーデルカではないかという話だ」

「な……!?」


 その過程で国王が耳にした報告内容に、ロランは驚き固まる。

 ブラッド・クーデルカという名前は、今の王族にとっても忌むべき名前でもあるようだ。


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