第24話 幕間~その頃のクーデルカ王国③~

【Side クーデルカ王国】


「おかしいですよ! 【深淵の地】に送られたら、二度と出られない場所ですよ!?」

「わしもそう思っておった。 だが、勇者パーティーの6人目のメンバーであの場所の見張りを買って出たアイリスからセイルを経由して報告があったそうだ。 ブラッドが深淵の地から脱出したと」

「な……!?」


 ロラン王子も【深淵の地】については、一度入ると二度と出られないはずの牢獄のようなものであると理解していた。

 その上で、ブラッドがそこから出られるはずがないと思っていた。

 だが、勇者セイル・パリカールの6人目のパーティーメンバーのアイリスが、ブラッドがそこから脱出したのを見たと言う報告を聞き、驚愕した。


「アイリスはすぐに奴を追ったのだが、目の前で姿を消して逃げられたようだ」


 そして、ブラッドが深淵の地を脱出したのを見たアイリスは、すぐに奴を追ったのだが、姿を消されて逃げられたと言う。

 ブラッドは、自分を追いかけて来るのを知っていた可能性もあるが。

 そこまで聞いたロラン王子も表情を歪めた。


「最悪ですね。 確かに奴は世界を自分の物にするというかつての魔王より厄介な思想持ちですから」

「うむ。 さらに女性も自分だけのモノという思想じゃったからな。 娘たちが震えてたよ。 それ故に王位剥奪と同時にそこへ送ったのじゃがなぁ」

「自分の思想を絶対に実現させると言う執念でなんらかの代物を手にしたのでしょうか?」

「そこまでは分からん。 じゃが、現実に奴がそこから脱出できる程の力を得た事は由々しき事態だ。 奴の理想の実現のための一つは世界の弱体化じゃからな」

「そのためのスポンサーとしてのフリスク一派の支援だと」

「わしはそう思うよ」


 ブラッド・クーデルカの思想は、あまりにも歪みすぎた思想の持ち主であったそうだ。

 まず、世界を自分の物にし、自分で世界を管理すべきだという考え。

 さらに、世界の女性全員においても、自分だけのモノという思想のため、特に婚約者持ちの女性を無理やり寝取らせるなどをして、問題を起こしていた。

 その対象は、自分の姉や妹も含まれているので、彼女達も恐怖に震えていたそうだ。

 そして、そのためにはまず、世界自体を弱体化させる必要があるらしく、うってつけだったのがフリスク一派の初期魔力至上主義なのだと、国王は予想していた。


「だが、バトルフェスタは開催するつもりじゃ。 ブラッド対策に人員を追加する必要があるがな」

「ですね。 今のワルジールだと【制約結界】をあらゆる手で使ってきますからね」

「制約結界に対する対策も同時に行う。 それまでは、ワルジールの捜査は暫くはフレデリカ殿に任せようと思う」

「ああ、フリット校長の妹さんで、フリスクに恨みを持つという……」


 そんな厄介な状況でもバトルフェスタは従来通りに開催するそうだ。

 ブラッド対策の人員の増加と、フリスク一派が支配しているワルジール魔法学校対策を同時に行うようにして。

 その間の捜査も、フリットの妹のフレデリカに任せると国王は言ったのだ。


「では、暫くの間にフレデリカさんに何人かの兵士を派遣しておきます」

「ああ、頼むぞ。 こっちは妻を通じてアリシアなどに注意を促してくる」

「はい」


 ロラン王子がそう返事をした後に、部屋を出る。


「さて、これからが大変じゃな。 世界がブラッドの思想に汚染されるのだけは防がないとな。 建築ギルドの事もあるしな」


 残った国王はそう呟きながら、窓の外を見た。


 それから三日後に建築ギルドにまつわる捜査の結果が届き、ファガーソン家によって歪められた事を知ることになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る