第21話 少年の受け入れと一つの予測

【Side アリス】


「ごめんなさい。 思いっきり泣いてしまって」

「大丈夫だよ。 こういう時くらいはね」


 思いっきり涙を流した男の子は、泣き止んだと同時に慌ててボクから離れ、謝罪していた。

 ボクは、そんな男の子の傍にいて、背中を撫でながらそう言った。

 心なしか彼の顔が赤くなってるね。


「では、アリス君。 彼の事をよろしく頼むよ」

「はい!」


 男の子が泣き止んだタイミングでクレス校長は男の子をボクに託した。

 ボクはもちろんそのつもりだよ。

 女に二言はないからね。


「さ、行こうか……。 えっと、名前聞いてなかったね。 ボクはアリス。 アリス・パリカールだよ」

「えっと、僕はミルト・ファガーソンです」

「ミルト君だね。 じゃあ、これからよろしくね」

「は、はい……」


 ボクはそう言いながらミルト君に手を差し出す。

 彼は顔を赤らめながらおずおずとその手を握った。

 何だろう、男の子だけどすごく可愛い……!


「ミルト君の入学手続きはやっておこう。 制服も明日以降に届くようにしておく。 まだ売店は開いているから、彼の日用品や寝間着など買っておいた方がいいだろう」

「分かりました。 じゃあ、まずは売店に行こうか」

「あ、私も行きますよ」

「そっか、ファナがよく知ってるから……案内お願い」

「もちろんです」


 校長の娘であるため、学校の事をよく知るファナに売店を案内してもらい、そこでミルト君の寝間着やタオルなどの日用品、後は食べ物を買って寮に持っていった。

 ミルト君の入学手続きは校長がやってくれるし、制服も明日以降に届くようだ。


「じゃあ、俺達は先に寮に戻ってるぜ」

「ちゃんとミルト君をエスコートしなさいよ、アリスちゃん」

「分かってるって」


 アンナさん、ミーナ、ジャック君は先に寮に戻るようだ。

 疲れもあるし、早く休まないといけないだろうしね。


「じゃあ、アリスさん、ミルト君、行きましょうか」

「うん。 行こう、ミルト君」

「はい」


 ううっ、ミルト君の仕草が母性をくすぐる……!

 ともかく、ボクとミルト君は、ファナの案内の元で売店へ向かった。


 さて、ここからミルト君と男女の共同生活。

 ボクよりミルト君の方がドキドキしてるみたいだけどね。

 それでも楽しみだし、彼には元気になって欲しいしね。


 明日以降も頑張るとしますか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【Side クレス】


「しかし、ファガーソンか……」


 アリス君達が校長室から出て行った所で、私ことクレス・エトワールはそう呟いた。

 ファガーソン家の悪名については私も聞いているが、どうも上手く隠蔽されたりして王家でも証拠が掴めなかったのだ。

 初期で攻撃魔法を使える者のみが優遇され、そうでない場合は死の寸前まで痛めつけてから追い出すと言う話だけ、伝わっているのだ。

 奴らはそれすら事故や餓死として処理するように圧力を掛けている。


「やはり、彼の追放と建築ギルドの契約解除は……」

「多分、奴の家系の仕業だろうな。 調査結果が出るまでは確定できないがね」


 しかし、今回の建築ギルドの契約解除ももしかしたらその家系の者が関わってるのではという予想を私は立てた。

 無能扱いされた者が新たな居場所を確保させない為に、お金などでルールを捻じ曲げたのだろうと。

 トッシュ先生もそうだし、多分アリス君もそう考えているだろう。

 とはいえ、調査結果が届くまでは確定はできないが……。


「追放被害に遭ったミルト君については、主にアリス君に任せて、我々はサポートをすべきだろうな」

「そう思います。 配属クラスは1-Eで?」

「ああ。 アリス君やミーナ君達と一緒の方がいい。 ラビ先生にもそう伝えてくれ」

「分かりました。 早速伝えに行きます」


 ミルト君が入るクラスをアリス君と同じ1-Eにすることをラビ先生にも伝えるために、トッシュ先生は校長室を出た。

 そして、校長室は私一人になる。


「さて、カティアやセイル、イリスにも共有しないといけないか。 追加調査も頼まないとな」


 そう独り言ちながら、私は水晶玉を机の上に出して、魔力を注いだ。


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