第18話 フロッガー戦

「あれ? ファナさん、そこは行き止まり……」

「この壁は実はすり抜けられるんですよ」

「うわ、本当だ」

「なるほどな。 魔法によるホログラフか。 確かに見た目は行き止まりに見えるよな」


 地下二階に着いてすぐの通路の壁に向けてファナが進む。

 ミーナが行き止まりだと止めようとしたが、ファナは何事もないように壁をすり抜けて進んでいく。

 ボクもアンナさんもそれに驚くが、ジャック君は冷静に解析していた。

 ファナの後を追うように、ボクとアンナさんは固まってるミーナを引っ張って壁をすり抜けて進んでいく。

 すると通路の先にドアが見えた。


「あの木のドアの先にフロッガーという魔物が潜んでいます。 開けたらすぐにアンナさんの【ブリザード】で凍らせて下さいね」

「うん、分かった!」

「その後、アリスさんと私の【ファイアボール】でフロッガーの足元を凍らせた敵から屠って行きましょう」

「杖で倒さないの?」

「フロッガーはこのダンジョンに棲む魔物の中では強い部類なので、杖の打撃では倒せないんですよ。 なので魔法で倒していきます」

「ああ、そうか。 最悪ボクの魔力で屠ればいいわけだ」

「ジャックさんとミーナさんは、アンナさんの魔法から外れたフロッガーを凍らせてください」

「「了解!!」」


 入る前にフロッガー戦のプランをファナから聞く。

 まず、初手でアンナさんの【ブリザード】でフロッガーの足元を凍らせてから、ボクとファナの【ファイアボール】で各個撃破に回る。

 ちなみに【ブリザード】は、冷気の初級範囲魔法で、アンナさんが得意としてる魔法だと、アンナさん自身が教えてくれた。


 なお、フロッガーは現在いるダンジョンの中では強い部類に入るため、杖による打撃ではほぼ倒せないらしい。

 戦士系がいない今のメンバーでは、魔法で立ち回るしかないようだ。


「では、行きますよ」


 そう言いながらファナが思いっきりドアを開ける。

 中には見える部分でもかなりの数のフロッガーがいた。


「【ブリザード】!!」

「おおっ! 流石アンナさん!」

「一瞬でフロッガーの足元が凍ったね」


 ドアを開けてすぐにアンナさんの【ブリザード】で多数のフロッガーの足元を凍らせる。

 流石はアンナさん。

 彼女の【ブリザード】のおかげで、流石のフロッガーも足元を凍らされては動くことは叶わない。


「アリスさん!!」

「うん! 【ファイアボール】!!」


 そこにファナとボクで【ファイアボール】を放つ。

 足元を凍らされて動けなくなったフロッガーは、ファイアボールに成すすべもなく直撃し、消し炭になっていく。


「アリスさんのファイアボール、フロッガーだと三匹纏めて燃やせるのがすごいですね」

「そういうファナも五連射とかやるじゃん!」


 ボクは魔力を高めたファイアボールで、三匹纏めて消し炭にし、ファナもファイアボールを五連射してフロッガーを次々と消し炭にしていく。

 アンナさんは【ブリザード】をその都度放ち、フロッガーの足元を凍らせている。

 もちろん、ミーナとジャック君も冷気魔法で外れたフロッガーを凍らせている。


「いいですよ! この調子でいけば……!」

「あっ、アリスちゃん、後ろ!!」

「えっ!? ひゃああぁぁっ!?」

「アリスさん!?」


 ボクもファナも順調にフロッガーを駆逐していたのだが、ミーナの声で後ろを振り向こうとしたら、突然お尻を撫でられた感触を感じ悲鳴を上げてしまった。


「このっ!!」


 改めて振り向くと、アンナさんが杖の柄でフロッガーを何度も突き刺していた。

 うわぁ、グロい……。


「このカエル、舌でアリスさんのお尻を舐め回したのよ!」

「そ、そうなの? 道理で突然お尻を撫でられた感触があったわけだ……」

「うわぁ、とんだスケベカエルだったんだ……」


 まさか、フロッガーが舌でボクのお尻を舐め回してくるとは……。

 とんだスケベカエルだったわけだ。

 気を取り直して、ファイアボールで残りのフロッガーを駆逐した。


「終わりましたね。 【タリスマン】も結構ドロップしましたし、回収して帰りましょうか」

「そうだね。 幸いスカートも濡れてないし」

「ああ、舐め回されたから濡れてるんじゃって思ったのね」


 フロッガーを全て駆逐したボク達は、思った以上に多く落としてくれた【タリスマン】を回収し、ダンジョンを出て受付に戻る。

 一度スカートのお尻の部分を確認したが、幸い濡れてなかったのでそこは安心した。

 

 受付付近にある学校の換金室で【タリスマン】を含んだ全ての素材の買取をしてもらった結果、三万ゴルダだった。

 一応、分け前を相談したが、全会一致でボクが全て貰う事になった。

 いくらかは来年の学費として貯金して、残りは新しい本でも買おうかな……。


「さて、そろそろ寮に戻りましょうか」

「そうだね。 ボクも疲れたし……」


 最初の目的を果たしたのと、初のダンジョンで疲れたので、寮に戻ろうとした時だった。


「何だと!? ふざけるな!! 誰が私の名を勝手に使って……!!」

「お父様!?」


 クレス校長の怒りの声が聞こえた。

 しかも、受付まで声が響いていたんだけど、どうしたのかな?


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