第15話 幕間~その頃のワルジール魔法学校~

【Side ワルジール魔法学校】


「すみません、フレデリカさん」

「いえ。 まさか、あのフリスクが学校を乗っ取るとは思わなかったので」


 一方のワルジール魔法学校にて、キルスとルリルラは裏門にてフレデリカ・ワルジールと話をしていた。

 フレデリカもまさかフリスクが魔法学校を乗っ取るとは思ってなかったのだろう。

 これまでのフリスク一派の被害に遭った生徒たちは、彼女によって保護され、エトワール魔法学校への入学を勧めていた。


「キルスさんとルリルラさんの退学、向こうはなかなかしぶとかったですね」

「ええ。 ですが、カティアの名前を出した途端、顔色が変わりましたからね」

「聖魔女のイリスさんの方が影響力が強いのにな。 やはりそこは初期魔力で決めてたのだろうな」


 あらゆる準備をして、退学届けを出したキルスとルリルラ。

 しかし、フリスクやその取り巻きの教師は、必死で繋ぎとめていたのだ。

 そこで、キルスがカティアの名前を出した途端、顔色が変わり、ルリルラによる定期連絡の皆無を突っ込まれて渋々了承したようだ。

 そして、予めフレデリカさんを呼んで、裏門付近で待機してもらっていた。


 だが、キルスの言うように過去の勇者パーティーの中では聖魔女と呼ばれたイリスの方が影響力が強いはずだが、フリスク一派はイリスには全く動じず、カティアの名で動揺した。

 そこでも初期魔力で決めていたのではと予想していた。


「確かに当時のイリスさんは、カティアさんに比べて娘のアリスさんみたいに初期魔力が低かったですが、魔力の成長は著しかったですよ。 ささ、ひとまずオルクスの町の宿屋に行きましょうか

「はい」

「了解です」


 フレデリカに先導されるように、キルスとルリルラは裏門からワルジール魔法学校を出ていくのだった。


(さて、この後の事はゆっくり考えるとして、まずは魔法学校庁に属する親父に相談だな)


 その中で、キルスはクーデルカ王国の魔法学校庁に所属する彼の父親に相談しつつ、今後はゆっくり考えようと決めていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「キルスさんとルリルラさんが退学したですって!?」

「は、はい……! 本当の話です」

「先生やフリスク様は、止めななかったの!?」

「カティアという名を出された事で、渋々了承したそうで……」

「くっ!」


 その一方で、ワルジール魔法学校の生徒会室では、フリスク政権下でのナンバー1とナンバー2の退学に驚きを隠せないでいた。

 初期魔力がかなり高かったキルスとルリルラが去るなど、彼らにとっては前代未聞なのだ。


「くっ! フリスク様が校長になって貰い、初期魔力が低い無能を追放したり、精神的に痛めつけたりしてでも、我らの思想は維持されないといけないのに!」


 歯ぎしりする生徒会長の女。

 アリスをトイレに行かせずに失禁させたるなどのいじめを主導した女であり、現在の国の考えに対立する貴族の家系の出身でもある。

 故に、国経由でのイリスのクレームももみ消すことが可能だった。


「フリスク様も頭を抱えてらっしゃるそうで」

「でしょうね。 【スポンサー】が黙っていないでしょうね。 ともかく、後期バトルフェスタに向けた仕込みを急いで頂戴」

「ははっ!」


 今回の退学に対する【スポンサー】の動きに不安を抱きつつ、生徒会長は後期バトルフェスタに備えて準備するように命じた。

 しかし、生徒会長はこの時は知らなかった。

 既にカティアやイリスによって、【制約結界】に対する対策が練られていたことに。


 それが、フリスク政権下のワルジール魔法学校が崩壊の時であるという事に……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る