第14話 実技授業③
「では、お手柔らかにお願いしますね」
「うん、と言ってもボクはファイアボール縛りになるけど……」
「あはは……。 まぁ、アリスさんの【ファイアボール】は純粋に中級魔法の【クリメイション】レベルの威力ですし、仕方がないかと」
闘技場のグラウンドに立ったボクとファナは、模擬戦前の話をした。
ファイアボール縛りで戦わざるおえないボクに、ファナモ理解を示してくれた。
まぁ、ボクがお披露目の際に放った【ファイアボール】の威力についての話に、観客席にいる他の生徒たちが唖然とした様子で聞いていた。
うん、そういう反応されるのは予想してたよ!
「では、模擬戦始め!!」
とりあえず、トッシュ先生の開始の合図とともにボクは牽制でファイアボールを一発放つ。
このファイアボールは、牽制の為に威力は抑えめにしている。
「なんのっ!」
ここは、流石ファナだと言うべきか。
ボクが放ったのを見てすぐにファイアボールで対応してきた。
「【ファイアボール】!!」
「わわっ!!」
そして即座にボクの足元を狙って、ファナが同じく【ファイアボール】を放ってきた。
足元に落とされた火の玉に思わずバックステップで回避する。
「【ファイアボール】、二連発!!」
「なんのっ! 【バーニング】!!」
「ちょっ!?」
ボクはバックステップの後、即座にファイアボールを二発連続で放つが、渦巻きの炎を発生させる初級の範囲魔法の【バーニング】でかき消された。
「だったらこっちも……!!」
出来るだけこういう事はしたくはなかったが、ファナは火属性の制御が上手い。
ここは流石にクレス校長の娘だと認めざるおえないのだ。
なので、ボクはファイアボールを放つ。
しかし、普通に放ったのではない。
「ええっ!? ファイアボールを
「うおおっ!? マジか!?」
「ヤバすぎるだろ、あの子!! ファイアボールを5発同時に撃つなんて!!」
そう、ボクはファイアボールを
魔力を5本の指にそれぞれ集約させて、それを火の玉として一気に解き放ったのだ。
クラスメートもこれに驚きの声を上げている。
「アリスちゃん!? それは不味いって……!」
「元々その手の芸当がすごかったからな、アリスさんは」
「うへぇ……」
観客席のミーナからそれは不味いという声が聞こえたが、ファイアボール縛りで戦うボクには、【バーニング】などを使うファナに対抗するにはこれでしか道はない。
一方でジャック君は冷静に見ており、アンナさんは空いた口が塞がらないみたいだ。
「ううっ、ファイアシールド!!」
「えっ!?」
だが、すかさずファナが火属性の防御魔法の【ファイアシールド】を使った。
彼女の前に火の盾が現れ、5発のファイアボールは全て防がれた。
「というか、ファナさんもすげぇ!?」
「5発同時に放ったファイアボールを全て防いだぞ!」
「というか、今のファイアボールって心なしか威力高くなってるよな?」
さらに観客席からの騒ぎが大きくなる。
こんな戦いを見たことがないのだろう。
大半はその後、食い入るように見ていたようだ。
「流石はアリスさん! でも、負けませんよ!! 【バーニング】!!」
「さっきより魔力を高めて来た!?」
ファナはそう言いながら、もう一度【バーニング】を放つ。
だが、さっきのとは違い魔力をより高めている。
心なしか炎も大きくなっている……!
(ならば……ボクは……!!)
「え……!?」
ボクは両手を前方に出し、そのまま魔力を集中する。
詠唱はそこまでないにしろ、これは初の試みだから、時間は掛かる。
だが、ファナの威力を高めた【バーニング】を対処するには今のボクにはこれしかない。
「今っ!!」
「ええっ!? こ、今度は
ボクはファイアボールを
耐性魔法が掛かってるので、火傷はしないが流石に痛みで気を失った。
「あ、アリスの勝利!!」
「アリスちゃん、今度は
「周りのみんなは、固まってるね」
「そりゃあ、あんな芸当を見せられたらな。 聖魔女の血が騒いだかな?」
トッシュ先生の驚きが混じった形の模擬戦終了の合図と共に闘技場がどよめいた。
アンナさんやミーナも流石に固まってしまったかな。
お母さんの芸当、実技の授業の時は自重しないといけないかな……。
そんな事を考えていたら、丁度実技の授業の終わりのチャイムがなったのだった……。
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