第13話 実技授業②

「最初は、1-Aからはライネス、1-Eからはリゼで模擬戦を始めよう。 先生方、頼みます」


 最初に指名されたライネス君とリゼさんが前に出ると同時に、補佐の先生から魔法が掛けられる。

 多分、耐性魔法なんだろうね。

 これを掛けておかないと、直撃した時に火傷じゃ済まされないしね。


「他の生徒は観客席に移動してくれ」


 そしてトッシュ先生は、待機中のボクや生徒に観客席に移動するように指示した。

 ボクはそれに従い、観客席に移動する。


「よし、観客席に行ったな? では、ライネスとリゼは準備はいいな?」


 ボクや他の生徒が観客席に行った事を確認してから、ライネス君とリゼさんにも確認する。

 

「では、ライネスとリゼの模擬戦、始め!!」


 二人が頷いたと同時にトッシュ先生から開始の合図が出た。

 直後、二人はファイアボールを放っていた。


「わっ、同時にファイアボールを!」

「いや、僅かに先にリゼさんが仕掛けてたよ」

「ええ、そこにライネス君が対応した形ですね」


 アンナさんから見れば同時に見えるだろうけど、僅かにリゼさんが先にファイアボールを放っており、そこにすぐライネス君も対応した形だ。

 ファナもボクと同様に僅かな違いに気付いたみたいだ。


「ファナさんは言わずもがなだけど、アリスさんも凄いねぇ」

「ほんの僅かのズレだからな。 殆どの生徒は同時に仕掛けたように見える」

「余程の目利きがないとね。 私もアンナさんみたいに同時に見えたし」


 アンナさんは、ボクとファナに対してやや呆れ気味に嘆いた。

 ジャック君とミーナもどうやらアンナさんみたいな感じだったようだ。

 でも、こういうのって、僅かな隙が致命傷になりえる事もあるからね。


「あ、ライネス君が勝ちましたね」

「クリメイションを囮にして、足を止めた所をファイアボール三連発かぁ。 ボクでは制御しないと無理な仕込みだね」

「でも、思いっきり顔に直撃してたわね。 耐性魔法を掛けてなかったら顔面火傷じゃ済まなかった感じね」

「でも、魔族とかは平気で顔を狙うしねぇ」


 最初の模擬戦はライネス君が勝ったようだ。

 クリメイションの炎をリゼさんの目の前に発動させて、足を止めた所をファイアボール三連発を顔に目掛けてぶつけたようだ。

 耐性魔法のおかげで火傷はしなかったが、やはり当たると痛かったのか目を回しながら気絶した。

 あ、よく見たらスカートが乱れて下着が見えてる……。

 補佐をしている先生が回復魔法を掛けているけど、目を逸らしてるのがわかるね。


「リゼの回復が終わり次第、次は……1-Eからはアンナ、1-Aからはソキウスでいこう」

「うえっ、私ぃ!?」

「あー、アンナさんは確か向こうでも火属性が苦手だったんだっけ……。 でも、頑張ってー」

「あはは……」


 次はソキウスという人とアンナさんが模擬戦を行う。

 アンナさんが火属性が苦手なのを知って、ファナが苦笑いしてたけど、ボクとミーナは何とか励ましておいた。

 いや、あれを励ますとは言わないけど。


 その後はアンナさんとソキウス君が模擬戦を行い、何とかアンナさんが勝利を収めた。

 ただ、火属性の制御はソキウス君が上だったのを初めて知った。

 アンナさんは相変わらず火属性が苦手なのは知ってるけどね……。

 向こうでは違うクラスだったんだけど、当時のミーナが教えてくれたんだっけ。


 その後もみんなが火属性のみという縛りの中で、一生懸命模擬戦をしていた。

 みんなは流石に中級の魔法を軽々と使えるのようで、少し羨ましい。

 ボクは別の意味で、ここでは中級魔法を使うのは危険すぎるからね。

 

 そして、ジャック君とミーナも難なく模擬戦で勝利を収めた所で、トッシュ先生からボクに声が掛かる。


「よし、最後は1-Eからはアリスと、1-Aからはファナだ。 頑張れよ!」


「「はい!」」


 最後の模擬戦はボクとファナがやることになった。

 流石にボクは、お披露目の際にやらかしてるので、魔力の関係上でファイアボール縛りでやっていかないといけないが、ファナ相手にどこまでやれるか……。

 

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