第12話 実技授業①

「よし、1ーAならびに1-Eの全員揃ったな? これより実技授業を始める」


 トイレを済ませて向かった先は、数日前に魔法のお披露目を行った闘技場だった。

 今回の実技授業は、1-Eのトッシュ先生がメインで行う事になる。

 実技なので、補佐としてラビ先生や1-Aの担任や副担任だけでなく、さらに三人ほど教師たちがいるみたいだけどね。


「今日は雷属性の魔法の実演と後半は火属性縛りでの模擬戦を行う」


 おおう、今日は雷属性の実演かつ火属性縛りの模擬戦か。

 雷属性は制御が上手くないと自分に落ちる可能性があるから、使う際には慎重にならざるおえなかった。


「まずは雷魔法の実演だ。 最初は初級魔法の【インスパイア】からやっていこう」


 そう言って、まずはトッシュ先生が実演を始める。

 先生は指先で魔力を集めて行使するが、大抵は杖を使って魔力を行使する。

 それだけ、先生は魔力の制御が上手いのだろう。


「【インスパイア】!」


 先生が魔法名を言った直後に小さな落雷が的に直撃する。

 的はあのミスリル製なので、殆ど焦げ一つも付かない。

 というか、先生は演習の見本という事で、敢えて威力を落としているとみていい。


「俺は指先で集中して魔法を使ったが、君達は配布した杖で行使してもらう」


 あ、やっぱり杖が配られるんだ。

 補佐を務める教師から、みんなに杖が配られた。

 手に取ってみた所、どうもこの杖もミスリル製らしく結構軽い。

 これなら他の生徒もやりやすいんじゃないかな?


「では、1-Aのクラスからライネス。 君からやってみようか」


 一応、先生のやり方を見たのだからそれになぞらえていれば出来ると思う。

 でないと初級魔法の意味がないからね。

 ただ、他の属性と違って制御が出来ないと痛い目に遭うからねぇ。

 ライネス君も手にしている杖から魔力を集中させている。


「【インスパイア】!」


 ライネス君が魔法名を叫んだ。

 そして小さな落雷が降り注ぐが……。


「いぎゃあぁぁぁぁっ!?」

「ら、ライネス君ーーっ!?」

「うわぁ……」

「いきなり直撃かぁ」

「制御失敗するとこうなるんだね……」


 どこかでブレがあったのか、自分の所に落雷してしまったようだ。

 彼のガールフレンドらしき女の子の叫びが響き渡る。

 精神を集中させておかないと、こういう事になるんだよね……。

 補佐の先生たちがすぐに駆けつけ、回復魔法を掛けたおかげですぐに持ち直した。


「魔力だけでなく、精神もしっかり集中させないとさっきのような目に遭うぞ」


 さて、他のみんなも同様に実演していくのだが、安定して放つ事が出来たのは1-Aからはファナ、1-Eからはアンナさんとジャック君、ミーナを含めて10人くらいか。

 他の子はブレてしまったらしく、自分に落雷してしまったようだ。

 こういう状況になった時にすぐに対処できるように、実技授業時に多数の補佐の先生がついてるんだなぁ。

 そういえば、フリット校長時代のワルジールは、一応補佐の教師は配備されてたけど、フリスク一派になってからはそれすらなかったなぁ。


「では、アリス。 君の番だ」

「はい」


 そしてとうとうボクの番がやって来た。

 余計な事を考えずにしっかり魔力と精神を集中させるべく、ボクは杖を構えた。


「【インスパイア】!!」


 ボクは杖に魔力を集め、さらに精神を集中させた状態で【インスパイア】の魔法を発動させた。


「あっ!」


 落雷はちゃんと発生し、的に当てたものの、如何せん威力が高すぎだ。


「うおおっ!?」

「きゃあっ!?」

「ちょっ、アリスちゃん!!」


 ドォンという大きな音を立てて落雷したので、トッシュ先生や他の生徒は即座に退避した。

 そして、ミスリル製の的はというと……。


「マジかよ……」

「的が消し炭に……」

「【インスパイア】の威力じゃないよ、これは」


 1-Aのみんなのざわめきからして、やっぱり消し炭になってしまったようだ。

 威力の調整、今後はやっていくべきかなぁ……。


「クレス校長先生から、アリスの魔力の凄さを聞いたが、ここまで凄いとはな」

「すみません……、的を消し炭にしちゃって」

「ああ、気にしないでいい。 ミスリル製の的自体は安いからな。 ただ、もう少し威力を調整した方がいいな」

「ですよね……」


 トッシュ先生からも言われる程にやらかした感が強い。

 やはり、これからの為に威力を調整しないといけないなぁ。


「アリスさん、ドンマイ」

「まぁ、雷魔法は威力の調整が難しいですし、アリスさん自身に落雷しなかっただけマシですよ」


 アンナさんとファナの励ましで、ボクは少し安心する。

 しかし……。


「言っておくが、調整が必要と言ったのはあくまでも実技授業ではだ。 冬に迫る時期に後期のバトルフェスタが行われるが、そう言った催しでは自重する必要はないぞ」


「「「ええ……」」」


 トッシュ先生のこの後の発言で、ボク達はドン引きした。

 一応、ボク達はその時期に後期のバトルフェスタは開かれるのは知ってるけど、なんかボクが出場する事が確定されてるような?


「アリスやワルジールからここに入学した生徒の事情は教師陣にも共有してるのさ。 今後のバトルフェスタのような催しで、実力を発揮させて、ワルジール魔法学校の鼻をへし折ってやろうと言う教師もいるくらいだ」


「うわぁ……」


 他の先生達にも、ボク達の事情を共有していたのかぁ。

 多分、クレス校長なんだろうなと思ったが、ファナの怒りから見て確信に変わった。


「さぁ、次は風の初級魔法【ウィンド】を実演する。 新しい的を用意できたしな。 みんなは離れて見てくれ」


 どうやら新しい的が用意されたみたいで、次は風の初級魔法を実演するようだ。

 当然ながら、お披露目の際にボクが使った【ウィンド】の魔法だ。


 お披露目の時に、ボクがやらかしたのだけど、これも精神を集中させて放たないと、風が無差別に巻き起こし、吹き飛ばされたり、女子は下手すればスカートが捲れてしまう奴だ。

 トッシュ先生が、離れるように言ったのもその為だろう。

 ただ、雷魔法よりは調整しやすいかな?


 トッシュ先生の実演の後、順番にやってみたが、やはり数人は精神にブレがあった模様で、吹き飛ばされなかったが、何回かはスカートが捲れてしまい、スカートを押さえる羽目になった。

 男子が申し訳なさそうに顔を赤くして目を反らしていたしね。

 ボクも何とか威力の調整にも成功し、的を倒すだけに止める事が出来た。


「よし、次は火属性縛りの模擬戦を行う」


 そして、いよいよ火属性縛りだが、模擬戦を行うとトッシュ先生が言った。


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